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震災の仙台から(5):震災における調剤、投薬

 今回の震災では、医療施設、調剤薬局そして薬の卸問屋も甚大な被害を受けました。最近は経営上の理由から大学病院などでも薬剤の種類と在庫をできるだけ少なくするよう努力がなされていました。そのため震災発生時、当院の薬剤部にある薬の量は極めて限られたものでした。また近隣の調剤薬局でも多くところでは薬剤の在庫が少なく、また卸問屋の倉庫も壊滅的な被害をこうむりました。さらには陸海夕の交通路が遮断されたことに加え、ガソリンがないため車も動かせず物流が途絶えてしまい、補給の道も限られていました。先週は、車が使えないので卸問屋から病院や薬局への薬の輸送を自転車で行っているという報告もありました。今週は少しずつでも被災地への薬剤を含めた物資の搬入が増えることが期待されていますが、まだ当分の間はこの問題が十分には解消されないのではないかと思われます。

 言うまでもなく、薬がないことや、薬をもらいに行く薬局や手段がないことは患者さんにとって重大な問題です。私のNMOの患者さんの中にも、津波で家を流され薬も薬手帳も失い、震災当日に避難所暮らしが始まってからステロイドの服用が途絶え、昨日から視野障害が出てきた方がいらっしゃります。視神経の領域にNMOが再発した可能性があり、来院していただくことになりました。薬物治療が中断されることは、MSやNMOを含めてあらゆる病気において病状の悪化や再発、再燃が起こりうるので、薬が供給されそれがすべての患者さんに行きわたることがとても大切なことです。

 このような緊急事態の中で、東北大学病院では、長期処方をして調剤薬局に備蓄されている薬剤が一気に枯渇してしまわないように、外来受診時の院外処方は当面7日分までとしています。少しずつ薬を処方して、その間に薬剤の調達が改善するのを待とうということです。また本日から院外処方の「分割調剤」も始まりました。これは最大30日分までの処方をして、調剤薬局ではまず7日分の薬をもらい、後日再度薬局に行って残りの分をもらっていただくというものです。ただ本日(平成23年3月22日火曜日)の時点では、当院の周辺ではこのような分割調剤に対応できることが確認されているのは大学病院前の4つの調剤薬局のみで、他の地域における実状は明らかではありません。また病院に受診すること自体が不可能で処方箋を出してもらうことができない場合は、お薬手帳や処方箋の写しを提示すれば、調剤薬局で可能な限り処方してもらえるということになっています。

 現在、製薬会社、卸問屋、薬局、医療施設、また行政、運輸など関連するすべての方々が薬剤の調達に全力で取り組んでいます。当院の外来棟はまだ暖房も入らない状況であり来院される患者さんには大変申し訳ないのですが、当面はこのようなやり方で事態が少しずつ好転するのを待つことになります。(つづく) (藤原)


by multiplesclerosis | 2011-03-22 16:07 | お知らせ
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