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A new STEP in MS

 6月10-11日チェコ・プラハで行われた"A new STEP in MS: Scientific Training and Education Programme"に参加してきました。この会のメインは日本でも近々承認予定のFingolimodです。Fingolimodは元々日本で開発された免疫調節薬で、スフィンゴシン-1リン酸受容体を介したリンパ球の遊走能抑制により免疫機能を調整する薬剤です。f0183250_1511049.jpg
 44ヶ国から100人を超える参加者が集まり、会場は熱気に包まれていました。FREEDOM(Fingolimodとプラセボとの比較試験)とTRANSFORMS(FingolimodとIFN-β1aとの比較試験)の2つの治験結果の説明もさることながら、「炎症過程での機能不全のみでMS病態の進展は説明できるか?」という議題でのパネルディスカッション、医療面接の技術に関するセッション、各地域ごとに分かれた分科会でのグループディスカッションといったプログラムも用意されており、盛り沢山の2日間でした。
 特に興味深かったのはScripps Research InstituteのJerold Chun先生が発表していた、Fingolimodの中枢神経細胞に対する作用についてです。EAEマウス(実験的な多発性硬化症モデルマウス)において、Fingolimodは末梢リンパ球に作用するのみならず、脳血管関門を通過してアストロサイトやオリゴデンドロサイト、マイクログリアに作用し、グリオーシスや脱髄などを抑制する効果があったとの報告でした。単純な免疫抑制効果だけなく中枢神経系に直接作用する効果があるとすれば、MSのみならず中枢神経疾患に幅広く応用できる鍵となるかもしれません。
 分科会では、オーストラリア、台湾、マレーシア、フィリピン、インドネシア、南アフリカと一緒のグループに入りました。治験での結果や、既に承認されたEU諸国やロシア、アメリカでの承認内容を元に、Fingolimodを中心としたMS治療について議論しました。参加者の関心が高かったのは、現在他剤にて治療を受けているMS患者さんでのFingolimodへ切替についてや、Fingolimodの安全性についてです。どのような患者さんで切替をすべきか、Fingolimod特有の副作用にはどのように対処すべきか、等について、各国から活発に意見が飛び交いました。座長を務めたMartin Duddy先生とはたまたま知り合いであったこともあり、日本での事情について意見を求められた場面もありました。自分自身もディスカッションについて行くのに必死であっただけに、日本が国際競争で勝って行くためにも英語でディスカッションをする能力は必要不可欠に感じました。
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 ヨーロッパに行くとどうしても早起きしてしまうのですが、今回も毎日朝5時頃に起きてしまいました。折角なので、ホテルからプラハ城やカレル橋、旧市街広場まで散歩してみました。昼間は観光客で寿司詰めになっているこれらの場所もさすがに早朝はほとんど人がおらず、爽快な散歩を楽しむことが出来ました。市街地で朝ご飯を食べ地下鉄で戻ってくる予定が、財布をホテルに忘れてしまい、また歩いてホテルまで戻るというアクシデントはありましたが…(西山)


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by multiplesclerosis | 2011-06-12 15:14 | 研究会情報

酢酸グラチラマー使用中の妊娠・出産

酢酸グラチラマーglatiramer acetate(Copaxone®)は10年以上前から欧米で使われている多発性硬化症治療薬です。
(日本で現在治験中です)

この薬を使用している再発寛解型多発性硬化症の患者さんでの、妊娠・出産時の安全性と新生児の状態を解析したイギリスからの報告がJournal of Neurology誌に発表されました。

13人の患者さんが妊娠時に酢酸グラチラマーを使用しており、うち9人は出産するまで酢酸グラチラマーを継続しました。
のべ14妊娠があり、13児(1組は双生児)が無事出生、流産は2例のみで一般人口における流産率(15~20%)との差はありませんでした。
妊娠期間中の再発は1例1回のみ、出産後半年では2例でのべ3回の再発がありました。

新生児の平均体重は3318gで、明らかな奇形は認められませんでした。
低出生体重児は2例3児で認められ、1例目は双子、2例目は妊娠28週で再発を認めた例でした。
(疾患活動性が高いと低体重児が多くなることは他の論文で発表されています)

より多くの患者さんでの結果が必要ですが、妊娠前に再発予防薬を中止することのリスクを考えると、活動性の高い患者さんでは酢酸グラチラマーを妊娠出産期間中でも比較的安全に使用できそうです。(西山)

Glatiramer acetate exposure in pregnancy: preliminary safety and birth outcomes.
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by multiplesclerosis | 2010-12-21 18:02 | 文献

FDAがジレニア(FTY720)を承認

9月22日、スイスのノバルティス社は、米国食品医薬品局(FDA)が再発型の多発性硬化症の第一選択薬となる経口剤として初めてジレニア錠を承認したと発表しました。

ジレニア錠は、日本の旧吉富製薬が創製した薬で、日本では田辺三菱製薬が、海外ではノバルティス社が中心になって開発を進めています。

日本においても臨床試験が進行中で、近いうちに承認申請が出される予定です。

現在までに全世界で2600名以上の患者さんに治験として投薬され、最長7年目となるMS患者さんがいます。不整脈や呼吸機能障害、肝機能障害などの副作用のほか、重篤な感染症の報告もありますが、注意深く使用することで安全に使用することが可能と考えられています。

Novartis gains FDA approval for Gilenya(TM), a novel first-line multiple sclerosis treatment shown to significantly reduce relapses and delay disability progression


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by multiplesclerosis | 2010-09-23 21:55 | ニュース

ロシアでジレニア(FTY720)承認

スイスのノバルティス社は、9月10日、多発性硬化症に対する経口薬のジレニア(一般名フィンゴリモド、開発名FTY720)がロシアの健康局によって承認されたと発表しました。

ノバルティスは、2011年初頭にもロシアで販売開始になる可能性があるとしています。

ジレニアの承認は世界で初めてですが、今月下旬にはアメリカFDAでの審査結果が発表される予定です。日本でも近いうちに承認申請される見込みです。

Novartis announces Russian regulatory approval for Gilenya®, a once-daily oral multiple sclerosis therapy and first in a new class(ノバルティス社のサイトより)


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by multiplesclerosis | 2010-09-13 07:08 | ニュース

多発性硬化症の疲労に効く内服薬

英国のMultiCell Technologies, Inc.は、MSの疲労に対する対症療法として開発されたMCT-125の、フェーズIIb試験を英国内で実施すると発表しました。

MCT-125は、これまでのフェーズIIa試験で、疲労症状を示す138人のMS患者さんに投与され、投与開始4週間以内に効果発現し、重症度や臨床型に依らずすべての患者さんに疲労減少効果を示したと報告しています。

MCT-125は脳内のノルアドレナリンの再取り込みを阻害する作用を持ちながら、既存の抗うつ剤とは異なり、セロトニンの再取り込み阻害作用はほとんどありません。副作用なく、脳内のノルアドレナリン濃度を上昇させることで疲労を感じにくくなる効果を示すと考えられています。

MultiCell Hires Clinical Research Organization to Manage MCT-125 Phase IIb Clinical Trial(MultiCell Technologies, Inc.のサイト)


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by multiplesclerosis | 2010-07-13 07:52 | ニュース

RRMSに対するOfatumumab(オファツムマブ)の第2相試験中間結果

GenmabとGlaxoSmithKlineが共同で開発する新しい抗CD20抗体のオファツムマブの、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)に対する安全性を確認するプラセボ対照第2相試験の中間報告がGenmab社より公表されました。

オファツムマブは商品名をArzerraとし、HuMax-CD20という名でも知られている注射製剤で、慢性リンパ球性白血病などへの適用が期待されています。そのB細胞除去能はリツキシマブを凌ぐと言われており、リツキシマブが適応となる疾患に対する治療法としてより高い効果と安全性が期待されます。

本試験では38人のRRMS患者を4群(プラセボ群、100mg投与群、300mg投与群、700mg投与群)にわけ、1度点滴した後、24週間の経過観察をしています。

いずれの投与群も予期せぬ副作用はなく、MRIでの新規病巣数の有意な減少がみられたと報告しています。今後投与量を変えてさらに24週間の試験継続を予定しているとのことです。

すでにB細胞をターゲットとしたリツキシマブがMSでの新規病変出現抑制に効果を示すことが報告されていますが、これらの薬剤の長期的な効果や安全性の確認が望まれます。

Genmab Announces Interim Results of Ofatumumab Phase II Study in Multiple Sclerosis (Genmab社のサイト)


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by multiplesclerosis | 2010-07-07 12:23 | ニュース

アボネックスの15年間長期投与効果

週に1回の筋注製剤であるアボネックスでも15年間の長期投与の解析がMultiple Sclerosis誌の先月号で報告されています。

この報告では、15年間アボネックスを継続した患者さんでは、継続していない患者さんと比較して重症度が低く、QOLスコアが高かったことを示しています。また、15年間継続していた症例は初めの治験で実薬だった症例が多かったようです。

アボネックスの長期投与による病気の抑制効果が示されていると考えられますが、中止した症例の一部はアボネックスで活動性が抑えられなかったことも示唆しています。今後は早期に治療反応群と反応不良群の見極めが必要であると述べられています。

一方、15年間で目立った副作用の発現はなく、安全性も実証されたと報告しています。

Intramuscular interferon beta-1a therapy in patients with relapsing-remitting multiple sclerosis: a 15-year follow-up study


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by multiplesclerosis | 2010-06-15 15:54 | 文献

FDAがGilenia審査のアドバイザー委員会を招集

AP通信によると、米国FDAがスイスノバルティス社が開発するGilenia錠(開発名FTY720、一般名Fingolimod)の承認申請に対して、その安全性の確認のためのアドバイザー委員会を招集したと報じています。

委員は25名で構成され、全員一致でその効果と安全性を認めたとしています。一方で、不整脈の出現が高頻度であることから、初回投与時は医師の監視下であるべきとの指摘や、呼吸機能低下の副作用に対して定期的な呼吸機能検査の必要性を指摘しています。

さらに、これらの副作用は、低用量群で少なかったことから、より低い用量での適用を安全性を考える上で検討するべきとの指摘をしています。

25名中20名が申請された用量よりもさらに低い用量での臨床試験の実施が必要であるとの考えを示しました。ただし、試験を実施してからの承認では数年開発が遅れることになり、ノバルティス社には市販後の試験を課すことになりそうだということです。

最終的な決定は9月下旬になりそうですが、安全性の懸念を完全に払拭するために、承認後もしばらく注意深い観察が必要になりそうです。

FDA panel: Novartis sclerosis drug safe, effective


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by multiplesclerosis | 2010-06-11 09:31 | ニュース

テリフルノミドのインターフェロンベータ併用効果

フランスのサノフィ・アベンティス社が開発する経口免疫抑制剤テリフルノミドの多発性硬化症に対する単独での進行抑制効果は現在欧米で大規模第3相試験が進行中であり、今年中には終了する予定です。

同社は、昨日開催されたACTRIMSで、オタワ大学のMark Freedman教授が、テリフルノミド(teriflunomide)のインターフェロンベータとの併用時の安全性を確認する目的の1年間の第2相試験の結果を発表したとプレスリリースを行い、同社のウェブサイトで公開しています。

本試験はテリフルノミドの有効性を証明する目的の試験ではないのですが、インターフェロンベータとプラセボ併用群と比較してテリフルノミド併用群では有意な造影MRI病変の減少が認められたと報告しています。また、両群における副作用の発現にも全く差がなく、1年間の併用における安全性は確認されたと報告しています。

テリフルノミドは、ジヒドロオロト酸脱水素酵素と呼ばれる細胞の増殖に関わる酵素を可逆的に抑制することで免疫反応を抑えますが、免疫細胞そのものを破壊しないので比較的安全な免疫抑制剤として注目されています。

Teriflunomide in adjunct to interferon beta significantly improved outcomes of Multiple Sclerosis patients


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by multiplesclerosis | 2010-06-06 15:05 | ニュース

イブジラスト(MN166)の神経保護作用

イブジラスト(MN-166)の再発寛解型多発性硬化症に対する1年間のプラセボ対照無作為割当二重盲検試験(フェーズ2)の結果がNeurologyに発表されました。

異なる2つの用量(30mgと60mg)と偽薬の3群にわけての1年間の解析で、1次評価として毎月の脳MRIにおける新規病変の出現数を比較しています。2次評価では年間再発率、重症度の変化、T2病巣面積の変化、T1病巣面積の変化、脳萎縮の進行を比較しています。

結果として、脳MRIにおける新規病変の数、年間再発率、重症度の変化、T2病巣面積の変化では各群に差はなく、イブジラストによる再発抑制効果は明らかではありませんでした。

一方、T1強調画像でブラックホールに至る活動性病変の割合や、脳萎縮の進行の程度には有意差があり、イブジラストの効果の可能性が示唆されています。

さらに、2年間での解析では、イブジラスト服用群で重症度が進行しない症例の数が多かったと報告しています。

イブジラストは再発抑制よりも、脳萎縮につながる神経変性をいくらか予防できる可能性があり、今後症例数を増やしたフェーズ3の臨床試験による解析が必要だとしています。

日本でも古くから脳梗塞後遺症や気管支喘息などに対する治療薬として用いられており、その安全性は確立している薬なので、少しでも効果があるのであれば補助的な薬としてとても有用と思われます。

Barkhof F, et al. Ibudilast in relapsing-remitting multiple sclerosis. A neuroprotectant? Neurology. 2010 Mar 3. [Epub ahead of print]


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by multiplesclerosis | 2010-03-07 10:36 | 文献
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