HOME > 多発性硬化症治療学寄附講座ブログ

<   2009年 11月 ( 7 )   > この月の画像一覧

青森多発性硬化症(MS)講演会

f0183250_1357470.jpg11月28日に弘前市の弘前市総合学習センターで第4回青森多発性硬化症(MS)講演会と医療相談が青森県、弘前大学神経内科、バイエル薬品の共催で開催され、講師として招かれて講演をしてきました。弘前大学の東海林教授が司会と座長をされ、医療相談にまで応じておられて、とても恐縮しました。

患者さん、ご家族約40人が聴講される中、「多発性硬化症のあらましと最新の治療」という演題でした。途中、留学していたカナダの写真などを紹介していたら、予定の50分を約20分もオーバーしてしまいました。いくつかの新規治療薬の開発状況を聞いて希望が湧いてきたという感想が多くうれしく思いました。

医療相談では数名の患者さんやご家族とお話ができただけでしたが、とても有意義でした。適切な治療を受けていて、病勢は安定しているものの、将来に対しての漠然とした不安をとても強くお持ちであることがよく伝わりました。


[PR]
by multiplesclerosis | 2009-11-29 08:06 | 講演会報告

第2回 PACTRIMS

11月20日と21日に香港で第2回のPan-Asian Committee on Treatment and Research in Multiple Sclerosis (PACTRIMS)の会合が開催されました。まだ第2回の若い学会ではありますが、アジアおよびオセアニアの多発性硬化症に関わる医師や研究者のほか、アメリカやカナダなどから招待された研究者が集まり、とてもいい学会になってきた印象を持ちました。

当院からは三須が「Pathology of MS & NMO」というタイトルで発表したほか、中島が「Pathogenesis and Diagnosis of Clinical Isolated Syndrome and Multiple Sclerosis」を、藤原教授が「Issues and the Need for Consensus: The Tokyo Workshop」というタイトルで講演を行い、いくらかでも学会の盛り上げに貢献できたのではないかと思います。

アジアではMSの有病率が低い上に、診断に欠かせないMRIの普及率も低く、適切な治療が受けられない患者さんもまだまだ多い状況です。経済的な問題で満足に検査や治療を受けられない地域もあります。さらに、NMOや非典型的なMSの割合も多く、診断も欧米のように簡単にはいきません。

f0183250_21135851.jpgアジア、特に中国やインド、東南アジアの国々の患者さんが正しい診断のもと、適切な治療が施されるようになるためにPACTRIMSの果たす役割はとても大きいように思います。ここでは最先端研究の競い合いよりも共同の臨床研究や専門医の教育・育成の方がよっぽど重要であり、日本の臨床研究が模範とならなくてはなりません。PACTRIMSの発展にご尽力されている斎田先生や九大の吉良教授には頭が下がります。

私は初めての香港でしたが、わずか30時間の滞在で全く堪能することができませんでした。学会主催のハーバークルージングからの夜景が眺められたのがせめてもの救いでした。


[PR]
by multiplesclerosis | 2009-11-22 21:25 | 学会報告

Guthy-Jackson慈善財団ミーティング

f0183250_18355220.jpg11月9日から11日にかけて、ロサンゼルスのビバリーヒルズにあるThe Tower Beverly Hills HotelでGuthy-Jackson慈善財団主催のroundtableカンファレンスが行われ、約50名の神経内科医、免疫学者などが集結しました。

財団から研究助成金を受けているMayo Clinic、UCSF、Stanford、Johns Hopkins、UTSWなどから1年間の研究活動報告があったほか、日本とイギリスのOxford、Walton centerからそれぞれの研究内容が発表されました。(プログラムはこちら)

日本からは中島と神経センターの山村先生が参加しました。私はこれまでの東北大でのNMO研究の10年間の成果を発表し、日本では古くからOSMSの研究が盛んであったこと、NMO-IgGの発見によってOSMSの多くはNMOであることが判明し、日本ではMSに対するNMOの割合が多いこと、NMOの病態はアストロサイトの障害が主体であること、髄液GFAP濃度が再発時に著増すること、ステロイドパルスと血漿交換の併用が再発治療に有効で血清抗AQP4抗体価が低下すること、少量のプレドニン内服治療で再発予防が可能であり、安定した時期では抗AQP4抗体価が比較的低いことなどを発表しました。予想以上に反響があり驚きました。

f0183250_0367.jpg研究助成を受けた研究者の活動報告の中ではUCSFのAlan Verkman教授の発表が刺激的でした。Verkman教授らはコロラド大のJeff Bennett助教と協力し、NMOの患者髄液中のB細胞の遺伝子から作成した人工の抗AQP4モノクローナル抗体を用い、直接マウスの脳に接種して反応を見ています。抗体だけの注入では病理学的に有意な変化が見られないものの、ヒト活性補体を同時に注入するとNMOの病理が見られたとしています。

また、Verkman教授は抗AQP4抗体とAQP4の結合を阻害する人工低分子化合物をハイスループットな手法で300,000以上の候補からスクリーニングし、2個の低分子化合物を同定したと発表しました。どのような化合物かは述べていませんでしたが、特効薬開発につながる可能性があり期待できます。またすでに自然界に存在する6,500以上の化合物のスクリーニングにおいても、南米産の植物由来の物質が有望とのことでした。

さらに、Verkman教授は最近The Journal of Biological ChemistryにJeff Bennett助教との共同論文を発表しており、アストロサイト上のAQP4がM1フォームとM23フォームの比率を調整して膜状の直行配列格子の大きさを規定していることを実証しています。抗AQP4抗体は直行配列格子を形成するAQP4を認識しやすいとされており、抗AQP4抗体が働くメカニズムの解明や動物モデルの作成にもつながる成果と考えられます。

UTSWのBen Greenberg助教は全米でのNMOの患者登録システムと、数種類の治療プロトコルの共同臨床試験を提案し、早期の治療ガイドラインの作成の必要性を訴えていました。多くの参加者からは時期尚早との意見もあり、個々の施設での治療経験をまとめるのが先決ではないかと考える研究者がまだ多いようでした。

他の施設からの研究報告も目覚ましいものばかりで、そのほとんどで動物モデルの研究が進んでいたのがとても印象的でした。治療法開発に動物モデルの作成は必要不可欠であり、そんなに遠くない将来に有望な治療法が見出される可能性を感じました。

f0183250_18404285.jpg財団の創設者であるVictoria JacksonはNMOの治療法開発に積極的にバックアップすることを明言しており、数百万ドル規模での研究助成が少なくとも今後2年間は続けられる予定だそうです。NMOのような希少な疾患にこのような多額の助成が行われることは幸運と言えるかもしれません。また、このような莫大な研究費をつぎ込めばそれなりに速いスピードで研究が発展することが実感できました。

今回のミーティングはクローズな会でしたが、顔見知りが多く参加していたのでとても気楽に過ごすことができました。10日の夜にはMayo Clinicの旧知のドクターたちとハリウッドに繰り出しチャイニーズシアターやコダックシアターを見学してきました。


[PR]
by multiplesclerosis | 2009-11-14 18:29 | 学会報告

第9回仙台MSセミナー

先日、仙台のプラザホテルで第9回の仙台MSセミナーが開催され、鹿児島大学の梅原藤雄先生と京都宇多野病院の田中正美先生の特別講演がありました。

梅原先生はHTLV-1関連脊髄症(HAM)と、視神経脊髄炎(NMO)の類似症例における鑑別についてとてもわかりやすく講演していただきました。

ポイントとしては、1.HAMで抗AQP4抗体が陽性になることはない、2.HAMで視神経炎は来さない、3.NMOの発症が数時間から数日で完成する"acute"であるのに対して、HAMでは"rapid progressive"とされる症例でも少なくとも数カ月は進行する、4.HAMでも炎症の程度が強ければNMOに類似した脊髄MRI病変を来しうる、5.NMOのHTLV-1キャリアーは髄液HTLV-1抗体が陽性になることがある、などです。

基本的にNMOとHAMの病態は異なりますが、NMOの発症にHTLV-1感染が関わっている可能性は否定できず、今後の研究に期待したいです。

田中先生はMSとNMOの病態の違いが明らかになったにも拘らず、臨床症状だけで両者を区別することが難しい問題点を指摘されました。また日本人のMSでは造影病変の出現頻度が欧米と比して低く、臨床試験の効果判定や再発の確認が得にくい状況を解説いただきました。

また、今後は我々が見出した髄液GFAP濃度測定など、病態を反映した検査によって、診断や再発の有無の同定を行う方法の開発が重要とのお話でした。病態に即した治療法の選択が重要であり、そのために正しい診断と再発の同定が可能なわかりやすい基準を早く作るべきだと感じました。


[PR]
by multiplesclerosis | 2009-11-07 11:57 | 講演会報告

難病東大生

私の外来に通院している患者さんから、東京大学に在籍しながら活躍されているMS患者さんの内藤佐和子さんの単行本が発行されたと聞いて、早速読んでみました。

f0183250_2216366.jpg本は内藤さんがMSと診断された時期を中心に始まり、最近のご活躍の内容まで続いています。文章はとても読みやすくわかりやすく、しかもとても配慮の行き届いた表現で、多くのMS患者さんにとって勇気付けられる本だと思います。

MSを根治できる治療法の開発にはまだまだ時間がかかるでしょうが、インターフェロンを始めMS患者さんの予後を大いに改善できる薬剤が益々手に入るようになり、入院する機会を減らすことが可能になると予想されます。今後はメンタルケアを含む薬以外でのサポートなどによって、更にMS患者さんのQOLが上がり、みんなが内藤さんのように前向きに頑張れるようにしなければと強く感じました。

内藤さんは2年前に個人基金まで設立されて難病研究に役立とうと努力されています。なんとかこの努力に報いるために我々も協力できることがないか考えたいと思います。


[PR]
by multiplesclerosis | 2009-11-03 22:25 | ニュース

視神経脊髄炎(NMO)と多発性硬化症(MS)の関係は?-討論@WCN 2009

バンコク(タイ)で第19回世界神経学会(WCN 2009)が開催され、藤原教授とともに行ってきました。我々の担当するそれぞれの講演や座長などが次々とあったため、ゆっくりとする時間はほとんどありませんでしたが、多くの先生方と話す機会もあり非常に充実した学会であったと思います。既に藤原教授から報告があったように、学会自体は天候にも恵まれ盛況であったと思います。

我々はアクアポリン4抗体の発見以後、この抗体がNMOの原因として確からしいかどうかを多面的に検討してきましたが、今回その成果の一部について、与えられたテーマ『Aquaporin-4 Autoimmunity (アクアポリン4の自己免疫現象)』(2009.10.27 MS 2 11:00-12:30)という演題名で発表してきました。その中では、①NMOは病理学的にアクアポリン4やアストロサイトの脱落を認めるアストロサイト障害性の疾患であること、②神経の髄哨(ずいしょう)の脱落(脱髄)を主体とするMSとは異なる特徴を有する疾患であること、③アクアポリン4抗体は、抗体の作用機序に関する様々な実験によりNMOを発症させる原因として確からしい証拠が数々出てきていること、などを発表してきました。自分のSessionでは、他にドイツのHohlfelt教授がMSにおける免疫病態について、米国のRodriguez教授がMSの再生治療について話されました。

<NMO vs MS 討論@WCN2009>
従来からNMOはMSという一つの疾患単位の中の特殊型であると考えられてきました。今日に至るまでMSの原因は不明なままですが、近年NMOにおいてアクアポリン4抗体が発見されたことによって、MSとは異なる疾患ではないかという考え方が受け入れられつつあります。今回のWCNでは、その点における企画討論(Debate “Devic’s NMO and MS are different or not” by Prof. Compston vs Prof. Lennon)(2009.10.27 16:00-17:00) に注目が集まりました。

Alastair Compston教授(ケンブリッジ大学)は、英国の有名な神経学雑誌Brainの編集長をされている言わば学会のご意見番のような方で、聞くところでは討論をさせたら右に出るものはいないというほどの方。一方、Vanda Lennon教授(メイヨークリニック)はアクアポリン4抗体を発見したご当人。討論は、Compstonが「私は女性と戦うのは好きではないが」などと言いながら首を絞める真似をしてLennonが舌を出してオドけるといった和やかなPerformanceで始まった。Compstonは、①MSもNMOも同じ神経系に病変の出る疾患であること、②日本においてNMOが減ってMSが増えている現状は同じ民族の間で病型が変わった連続的な疾患である証拠、③MSは髄哨だけでなく広く障害される疾患、であることなどから、NMOとMSは同じ疾患だと主張。一方、Lennonは、①アクアポリン4抗体が極めてNMO特異的抗体であること、②病理学的にもアクアポリン4が関連することが明らかであること、③アストロサイト障害が関連するMSとは異なる範疇の疾患である、などを主張された。前後で、両者への支持率が挙手にて示されたが、討論の前後でおおむね変化はなくLennon派が7割、Compston派が3割という程度でしたが、若干増えたということで軍配はCompston教授に上がっていました。このような形式の討論は初めて見ましたが、学問的というより討論能力の善し悪しにウェートがあったという印象と、あくまで臨床的な理解を向上することが目的であって勝ち負けは関係ないとは思いましたが、現状での色々な考え方を聞く上では極めて重要な討論であったといえます。

f0183250_2453758.jpg 翌日10.28には、ウィーン大学のLassmann教授がMS病理における多様性について話されMSは多様性のある疾患であるが、その中においてNMOは極めて異質の疾患であることをNMO-IgGを導入した疾患モデルの結果を用いて話されていました。続いてPrineas教授は、MSとNMOにおける特徴と題して話され、NMOにおけるアストロサイト及びアクアポリン4の脱落病変は特徴的でMisu-typeと表現されていたのが印象的でした。また、アストロサイト障害はMSも含めた脱髄現象を考える上で重要であることを話されましたが、時間の関係でMS関連のお話が最後まで聞けなかったのが残念でした。

今回の学会に参加して、MSという疾患は非常に多様な考えを持った人がいると改めて感心しつつ、良くも悪くもMSとNMOという二者の違いを明らかにしていくことが大きな波を生んでいる現実を肌で感じることができました。いずれにせよ、MSの多様性やNMOとの病態の違いを理解し、病態毎の適切な治療法の理解を進めていくことが何よりの近道であると感じています。

三須建郎 November 3, 2009
[PR]
by multiplesclerosis | 2009-11-03 22:00 | 学会報告

第19回世界神経学会(WCN2009)の報告

H21年10月24日から30日までタイのバンコクで第19回世界神経学会が開催され、世界各国から約3000名の参加者が集まり様々な神経疾患の病態や治療について幅広い議論が行われました。多発性硬化症(MS)は脳血管障害、てんかん、神経変性疾患、痛みと共に以前からこの学会の5つの主要テーマの1つになっており、10月24日と25日に種々の病気についてのティーチングコースの講演が行われた後、26日から30日までは1日ごとにこの5つの主要テーマを1つずつ中心にして招待講演、一般講演、ポスター発表などが進行していきました。

私は23日のMS及び関連疾患のティーチングコースで他の3名の演者と一緒にプログラムを組み、私自身は視神経脊髄炎(NMO)の治療について話しました。このティーチングコースは有料で5000円ちょっとの聴講料を払うのですが、私たちのセッションは売り切れでした。私の講演については、NMOの血漿交換療法の実際やNMOの臨床経過、アクアポリン4抗体の意義などについて多くの質問を受けました。27日火曜日がMSの日で、この日は3~4名の招待講演者からなるMSのセッションが4つあり、日本からは九大の吉良教授が日本のMSの疫学調査の結果を、また当講座の三須先生がNMOの病理学的特徴を中心に最新の知見について講演しました。

この日私はMSの治療のセッションの座長も担当しましたが、日本でも治験中のFTY720をはじめ内服薬の治験が欧米では複数進行しており、数年後には承認される見通しとのことでした。またインターフェロンベーターのような第一選択の薬剤が無効な場合に用いられるナタリズマブ(接着分子をブロックするモノクローナル抗体)やミトキサントロン(免疫抑制剤、日本にも白血病の治療薬としてあります)の高い有効性などについても発表がありました。一方で、いろいろな治験の結果を単純に比較することは必ずしも簡単ではないという指摘もありました。例えば、2002年前後の治験に参加した患者さんの特徴を比較すると、2001年までの患者さんは2002年以後の治験の患者さんに比べてより再発が多く病気の期間も長い傾向がみられており、つまり2001年までの治験はより厳しい条件の患者さんを対象にしていたということです。したがって最近少しずつ行われていますが、2つの薬剤を直接比較する治験の結果を出さなければ、Aという薬とBという薬の効き目がどちらがどのくらい優れているかは簡単には結論できないということです。

またNMOについてはディベート(議論)のセッションで“NMOはMSと同じ病気か、それとも異なる病気か”という大変興味深い問題を2人の専門家が議論しました。これについては聴講した三須先生に別に報告してもらいます。

次回第20回世界神経学会は、2年後(2011年)にアフリカ大陸に場所を移しモロッコのマラケシュで開催される予定です。その後5大陸を順番に回り、日本を含めたアジアオセアニアは8年後に順番が回ってきます。会場では日本神経学会の理事長である国立精神神経センター病院の葛原先生にもお会いしましたが、8年後に日本にこの学会を誘致すべく日本神経学会も動き出すようです。今回の世界神経学会では日本からの参加者はやや少ないという印象でしたが、これから皆が一丸となってこの大きな目標に向かって進んでいくことを期待したいと思います。(藤原)


[PR]
by multiplesclerosis | 2009-11-01 15:38 | 学会報告
このページの先頭へ

,

ブログトップ

S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

カテゴリ

以前の記事

検索

タグ

その他のジャンル

ツイッター

アクセスカウンタ

記事ランキング

Copyright �2008. Department of Multiple Sclerosis Therapeutics,Tohoku University Graduate School of Medicine. All Rights Reserved.