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第2回東北免疫性神経疾患治療研究会

埼玉医科大学総合医療センター神経内科教授の野村恭一先生をお迎えして第2回東北免疫性神経疾患治療研究会が仙台で開催されました。

野村教授は長年免疫性神経疾患に対する免疫吸着療法を積極的に導入されており、蓄積されたデータは非常に貴重なものばかりでとても勉強になりました。

特に、多発性硬化症でステロイドの反応が悪い症例に対して免疫吸着療法を施行し、改善がみられた症例のほとんどはその後視神経脊髄炎であったことが判明したというデータは興味深いものでした。視神経脊髄炎ではその再発時に免疫吸着療法とステロイドパルス療法を同時に開始することでより速やかな改善が得られる可能性があるのではないか、との持論もお伺いしとても参考になりました。

当院では、ステロイドパルス治療1クールを施行後に反応が悪い場合に限って1週間以内に単純血漿交換療法を施行していますが、このプロトコールが最良かどうかの確認は一切出来ていません。野村先生の提案する、再発時の免疫吸着療法+ステロイドパルス治療のメリットがどの程度あるのか当院でも可能なら検討してみたいと思いました。

免疫吸着療法と単純血漿交換の詳細はこちらを参照してください。


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by multiplesclerosis | 2009-10-17 23:26 | 学会報告

国際シンポジウム「視神経脊髄炎(NMO)の新たな展開」報告

10月2日-3日に淡路夢舞台国際会議場で開催されたシンポジウムの講演の内容をまとめてみました。(高井良樹)

講演1. Prof. Vanda Lennon (Mayo Clinic). The immunopathogenesis, neurological spectrum and clinical implications of aquaporin-4 autoimmunity.
 NMOは中枢における炎症性自己免疫性脱髄疾患であり、MSとの免疫病理学的な違いとして、AQP4及びEAAT2グルタミン酸輸送体の選択的減少や、血管周囲への液性免疫因子の沈着等が知られている。
 NMO-IgGは、NMO関連性疾患とMSを区別する重要な生物学マーカーであり、この抗体はアストロサイトのAQP4に結合することにより、補体を活性化し、AQP4及びEAAT2のダウンレギュレーションを起こすことにより、水とグルタミン酸の恒常性を破壊し、血液脳関門の透過性を亢進させ、液性免疫因子を病変部へ導入することにより抗体依存性細胞誘導性障害を引き起こすと考えられる。
(参考文献: J Exp Med. 2008 Oct 27;205(11):2473-81)

講演2. Prof. Kazuo Fujihara (Tohoku University). The immunopathogenesis, meurological spectrum and clinical implications of aquaporin-4 autoimmunity.
 NMOは重篤な視神経炎と横断性脊髄炎を特徴とする疾患として認識されているが、抗AQP4抗体発見後、その特徴はさらに明確になってきた。
 脳病変はNMOにおいて稀ではなく、NMOに特徴的と言える病変が存在し、かつ初発症状にもなりうること。また、病理学的にAQP4及びGFAPの免疫活性がより傷害されやすく、臨床的な増悪時に髄液中のGFAPが著明に上昇することから、NMOはその臨床的な特徴によらず、抗AQP4抗体の存在、及びそれに伴って生ずるアストロサイト障害性疾患として捉えられる。
(参考文献: J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2009 May;80(5):575-7)

講演3. Prof. Jun-ichi Kira (Kyushu University). Anti-AQP4 autoimmunity syndrome and anti-AQP4 antibody-negative opticospinal multiple sclerosis in Japanese: immunological and pathological studies.
 日本における抗AQP4抗体陽性/陰性OSMSの特徴を明らかにするため、対象191名の中枢性脱髄性疾患患者における抗AQP4抗体の有無及び、髄液サイトカインの測定、また剖検11例の病理学的比較検討を行った。結果、髄液中のIL-17, IFN-γ, GCSF, IL-8が、AQP4抗体の有無にかかわらずOSMS群で有意に高く、また病理学的にはOSMS例及びCMS例においてAQP4及びGFAPがより障害されている症例と、AQP4が保たれる症例が混在していた。これらの結果は、抗AQP4抗体関連性と非関連性のOSMSが存在し、CMSにおいてもNMOと類似の病理を生じえることを示している。
(参考文献: Brain. 2007 May;130(Pt 5):1206-23)

講演4. Prof. José Cabrera-Gómez (International Center of Neurological Restoration, Cuba). Epidemiology, natural history and NMO-IgG antibodies in the Caribbean basin.
 カリブ海領域(仏領西インド諸島及びキューバ)における、NMO98例における疫学調査を行った。男女比9.8、平均発症年齢30.9歳であり、アフリカ系により多く見られた(アフリカ系:ヒスパニック系=69.3:30.7)。
 有病率は西インド諸島において4.2/10万人、キューバにおいて0.52/10万人であり、有意差はないものの、黒人により高い傾向が見られた(黒人0.799、白人0.462)。
 NMO-IgGは48例中33.3%が陽性であり、西欧白人より低い傾向が見られた。これは、病因に民族間因子が存在する可能性を示唆している。
(参考文献: Mult Scler. 2009 Jul;15(7):828-33)

講演5. Prof. Jérôme de Seze (Strasbourg University). Clinical and experimental aspects of NMO : a French ecperience.
 フランスにおけるNMO125例について、他民族のコホート研究結果との比較検討を行った。その特徴は、既存のデータと共通していたが、やや疾患の重症度が軽かった。これは、多数例が免疫抑制剤にて加療されていたことに関係しうる。
 また、NMOにおける脳機能障害に対する調査では、脳病変の有無にかかわらずMSと類似した認知機能障害が見られた。磁気共鳴分光法(Spectroscopy)や拡散強調画像では異常を認めなかったが、脳白質における萎縮性変化が見られた。
(参考文献: Arch Neurol. 2008 Jan;65(1):84-8)

講演6. Prof. Brian Weinshenker (Mayo Clinic). Genetic analysis of AQP4 as a candidate susceptibility gene for neuromyelitis optica.
 162例の孤発性および10例の家族性NMO患者において、AQP4遺伝子の1塩基遺伝子多型性(SNP)解析を行った。その中で、家族性NMOの3例においてArg19におけるミスセンス変異を同定した。Arg19はAQP4-M1 isoformに特異的な遺伝子であり、これがAQP4-M23様の特性を示すことで、アストロサイトの足突起におけるAQP4格子様構造集合体を増加させる。この構造が、NMO-IgGによる補体の活性化、あるいは免疫耐性障害を介して、NMOの発症を誘導するのではないか、という仮説が考えられる。
(参考文献: Mult Scler. 2009 Sep;15(9):S69)

講演7. Prof. Keiko Tanaka (Kanazawa Medical University). Neuromyelitis optica -clinical variants and the binding epitope of anti-aquaporin 4 antibody.
 ヒトAQP4遺伝子導入HEK293細胞を使用した、免疫蛍光抗体法によるNMO-IgG検出法において、2500例以上の抗体陽性例における臨床的、疫学的特徴を確認した。これらの中には、長期間にわたり脊髄炎のみ、あるいは視神経炎のみを生ずる症例が存在した。このような症例はAQP4抗体関連疾患、NMO関連疾患、あるいは限定型NMOと表現されうる。
 上記抗体を同定するにあたり、マウス、ラット、霊長類の組織に対する血清抗体の反応性の違いが認められる。生物間のAQP4蛋白のアミノ酸配列の違いを解析することにより、抗AQP4抗体の抗原認識部位の同定に役立ち得ると考えられる。
(参考文献: J Neuroimmunol. 2009 Jun 25;211(1-2):110-3)

講演8. Prof. Monika Bradl (Medical University Vienna). Neuromyelitis optica: pathogenicity of patient immunoglobulin in vivo.
 NMOは脊髄及び視神経における、重度の炎症性変化及びアストロサイトの障害を特徴とする。抗AQP4抗体陽性NMO患者血清由来の精製IgGを、脳炎マウスに使用することにより、NMO患者に見られるような、血管周囲のIgG及び補体沈着、顆粒球と活性化マクロファージの浸潤を伴う、AQP4及びアストロサイトの欠落を示す病変を誘導することが可能であった。同様の変化は、抗AQP4抗体陰性NMO患者や、MS患者、健常者血清由来のIgGでは見られない変化であった。抗AQP4抗体は診断のみならず、病因としても重要と考えられる。
(参考文献: Ann Neurol 2009 in press)

講演9. Prof. Bruce Cree (UCSF). Neuromyelitis optica treatment.
 NMOは液性免疫が病態に関与していることが示唆されている。
 急性増悪期の治療は、高用量糖質ステロイドが第一選択として使用されるが、効果が不十分と判断される場合には血漿交換が良く用いられる。
 寛解維持療法については、免疫抑制剤がIFN-betaより効果的である。Evidenceの存在からazathioprineとprednisoneの併用療法が一般的に使用されるが、RituximabやMitoxantroneも現在効果が期待される薬剤である。
(参考文献: Curr Neurol Neurosci Rep. 2008 Sep;8(5):427-33)

講演10. Prof. Takashi Yamamura (National Institute of Neuroscience). Treatment of NMO and MS: Can we use same drugs??
 NMOの病因は未だ不明な点が多いが、MSと同様にT細胞やB細胞がその重要な役割を果たしていると考えられる。しかしNMOの治療は、IFN-βのようなMSに対する治療法をそのまま適用することは出来ない。NMO患者の脳において、NF-kB及びBlimp-1の分子網が亢進していることは、ステロイドが治療法として適当であること、及びNF-kBを標的とするCOX-2阻害剤が治療薬になり得ることを示しており、またIL-17がNMO患者の髄液中で上昇していることから、今後新薬を開発する上でTh17細胞とB細胞の相互関係を理解することが大切であると考えられる。
(参考文献: Neuropathology. 2008 Dec;28(6):561-76)


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by multiplesclerosis | 2009-10-11 22:06 | 学会報告

国際シンポジウム「視神経脊髄炎(NMO)の新たな展開」

10月2日と3日に淡路島の夢舞台国際会議場で視神経脊髄炎(NMO)に関する国際シンポジウムが開催されました。このシンポジウムは財団法人難病医学研究財団の公募事業であり、厚生労働省の難治性疾患克服研究事業免疫性神経疾患に関する調査研究班の班長である近畿大学神経内科の楠進教授が議長(実行委員長)を務められました。

海外からはNMO-IgG(抗アクアポリン4抗体)を発見したメーヨークリニックのレノン教授をはじめ、NMO研究の第一人者であるメーヨークリニックのワインシェンカー教授、NMO治療の先駆者であるUCSFのクリ―教授、フランスのNMO研究を牽引するするストラスブルグのドゥ・セズ教授、NMOの病理に詳しいウィーンのブレイドル教授、カリブ地域のNMO研究を牽引するキューバのゴンザレス・ケベド教授が招かれ、それぞれとても刺激的な講演をしてくれました。

どの講演でも日本のこれまでのNMO(OSMS)研究や国際共同研究の成果の重要性が強調されており、この疾患研究における日本の果たす役割がいかに大きいかということが改めて認識されました。

NMOの病態解明、治療法の開発に向けて、日本人研究者の負うべき責任は限りなく大きいことは明白で、共同研究や国際協力を推進して更に頑張っていかなければならないと感じました。このような有意義なシンポジウムを企画し、素晴らしい会場で完璧なプログラムを作っていただいた楠教授や実行委員の先生方、事務局を務められた近畿大学神経内科の先生方に心から感謝したいと思います。
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by multiplesclerosis | 2009-10-04 11:31 | 学会報告

経口クラドリビン錠がFDAに承認申請

ドイツのMerck KGaA社は、多発性硬化症に対する経口クラドリビン(cladribine)錠の承認申請をFDAに提出したと発表しました。

クラドリビンは2年間の第3相プラセボ対照比較試験(CLARITY)でその有効性と安全性が確認されており、短期間の服薬期間で長期的な効果が期待できる経口薬です。

Merck Serono Submits Application for Cladribine Tablets as a Potential Oral Short-Course Multiple Sclerosis Therapy in the United States


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by multiplesclerosis | 2009-10-01 13:12 | ニュース

FTY720の第3相試験(FREEDOMS)の結果

多発性硬化症に対する経口治療薬FTY720 (fingolimod) の第3相プラセボ対照比較試験(FREEDOMS)が完了し、2年間における成績が発表されました。

FTY720はプラセボ群と比較して54-60%の年間再発率の減少と30-32%の障害進展抑制効果を示しました。低用量投与群(0.5mg)投与群と高容量投与群(1.25mg)における効果の差は認められず、0.5mg投与での開発が今後進められていきます。

FREEDOMS試験には22カ国の1272例が参加しており、全体の3例で死亡報告がありましたが、1例は1.25mg投与群で2例はプラセボ群でした。0.5mg投与群では当初懸念された黄斑浮腫や悪性黒色腫などの合併症も1例もありませんでした。
そのほか、FTY720投与群において無症候性の肝酵素値の上昇、呼吸器感染症、軽度の血圧上昇などが認められていますが、重篤なものではないようです。

スイスのノバルティス社は今回の結果を踏まえて、2009年中に米国およびヨーロッパで承認申請を行うとしています。

Two-year Phase III study shows Novartis oral MS therapy FTY720 significantly reduces relapses and disability progression


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by multiplesclerosis | 2009-10-01 12:44 | ニュース
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