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カテゴリ:学会報告( 46 )

第65回米国神経学会の報告

f0183250_19262235.jpg第65回米国神経学会(American Academy of Neurology, AAN)が、2013年3月16日から23日までカリフォルニア州サンディエゴのコンベンションセンターで開催されました。仙台を出るときは冬用コートを着ていましたが、サンディエゴはとても温かくコートは不要でした。AANは世界最大の神経内科の学会であり、MS、NMOのみならず神経内科領域のあらゆる疾患の臨床、病態、治療など関する最新情報の発表が行われました。
当科からは黒田先生、ダグラス先生と藤原が参加しました。
 
MSのトピックスもたくさんありますが、以下にはNMOに関するいくつかの話題を紹介します。
NMOに関する教育コースでは、メイヨークリニックのピトック先生が具体的な症例を提示し、アクアポリン4抗体検査としてELISAでの低い値の陽性の場合は、実際には臨床やMRI所見からはNMOではなくてMSと判断され治療した症例が紹介されました。すなわち検査結果が偽陽性だったということです。逆に検出感度が低いための偽陰性の場合もあり、注意が必要だということが指摘されました。
 
日本からのポスター発表では、東京女子医大の清水先生の日本人のNMOの患者さんの妊娠出産時の再発率に関する研究が特に注目され、学会のハイライトに選ばれました。NMOの患者さんの多くは女性ですが、特に出産後の半年には妊娠前や妊娠中の時期に比べて再発が著明に増加する傾向が見られました。これまで、胎児への影響を考えて妊娠したら基本的にすべての薬をやめるというのが一般的な考え方でしたが、この結果をみるとNMOの患者さんが無治療で出産に向かうのは危険だと思われます。そこで最近当科では、アクアポリン4抗体陽性の患者さんが妊娠したら、ステロイドやイムランの内服を継続して再発予防を続けながら妊娠出産することを個々の患者さんと相談しながら進めています。胎児の安全と共にお母さんとなる患者さんの病状が悪化しないように注意を払うことが重要と考えています。

f0183250_19274075.jpgダグラス先生は、多数例における高感度のアクアポリン4抗体検査の結果から、現在のNMOやNMO Spectrum Disorderの基準を満たさない症例の中にも一部は抗体陽性例があることを報告しました。これは従来のNMOの概念より広い範囲の患者さんがこのグループに属することを示しており、特に治療を選択する上で重要です(MSの治療薬でNMOが増悪することが報告されていますので。)。発症早期にアクアポリン4抗体検査を実施することの大切さを再認識させる研究結果といえます。

NMOの新たな診断基準を作成するための国際委員会も開催され、どのような臨床症候や検査所見が診断上重要であるかが検討されました。今後さらに議論を重ねて、今年中旬ごろには新基準をまとめようということになりました。

また黒田先生は、一酸化炭素中毒の間歇型(遅発性脳症)の発症リスクと重症度に関する研究で、昨年に引き続き口演に選ばれました。年齢や間歇期の期間、またMSの脱髄マーカーである髄液のミエリン塩基性タンパク濃度などが重要であることを明らかにしました。

次回のAANは、2014年4月26日から5月3日までペンシルバニア州のフィラデルフィアで開催されます。(藤原)


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by multiplesclerosis | 2013-03-26 19:28 | 学会報告

第30回日本神経治療学会総会報告

f0183250_15121621.jpg平成24年11月28日~30日に、北九州市の北九州国際会議場を主会場に、第30回日本神経治療学会総会が開催されました。参加人数は1000人近く、会期も3日間となり、とても盛会でした。通常、この規模の学会は、研究報告が主体で、本会も以前は症例報告のオンパレードだったのですが、一般演題の大部分はポスター発表となり、多くの時間が疾患および治療手技の教育講演に割かれたことにより、とても意義ある学会に変わりつつあるように思います。さらに、日本発の創薬の推進、臨床試験の推進、産学連携の推進など、難病の多い神経内科疾患治療の開発に向けて重要な役割を果たす学会になっていきそうです。

初日の評議員会・総会のあとで、当講座の活動が2011年度治療活動賞を受賞することになり、代表で中島が表彰を受けました。辻貞俊学会長から表彰状と記念の盾をいただきました。受賞理由は「多発性硬化症及び視神経脊髄炎の早期治療に関連した検査サービスとオンライン医療相談」です。2002年頃から行っている髄液オリゴクローナルバンドの等電点電気泳動法による測定サービス(現在は三菱化学メディエンスに移譲して判定のみ)、2006年頃から行っている抗アクアポリン4抗体の測定サービス(担当:高橋利幸先生)、2011年から行っているインターフェロンβ中和抗体の測定サービス(担当:サトウダグラス先生)、2008年から行っているウェブサイトを介したオンライン医療相談などの、多発性硬化症の診療に関わる社会貢献が認められての受賞でした。

f0183250_15124484.jpg多発性硬化症関連では、教育講演、一般演題を含め、発売から1年になるフィンゴリモドの適用や安全性に関する話題が中心でした。安全性が確立しているインターフェロンβとの使い分けや切り替えのタイミングについての話も多く、どの講演でもインターフェロンβの中和抗体の意義について触れられていました。このこともあり、当講座からは再度中和抗体の臨床的意義について一般演題で話をさせていただきました。インターフェロンβは7割くらいの患者さんには本当によく効きますが、残りの3割の患者さんには明らかに効果は不十分で、フィンゴリモドへの切り替えが推奨されます。中和抗体の存在は将来の効力低下の可能性を示唆するものであり、切り替えの理由として重視してもいいと考えています。

学会2日目の懇親会では、シンガーソングライターの樋口了一さんが日本レコード大賞受賞作品の「手紙~親愛なる子供たちへ~」を熱唱され、大いに盛り上がりました。


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by multiplesclerosis | 2012-12-02 15:16 | 学会報告

ガシー・ジャクソン慈善財団ミーティング報告

f0183250_1052859.jpg2012年10月22日~23日の日程で、ロサンゼルス空港近くのホテルにおいて第5回のガシー・ジャクソン慈善財団(GJCF)主催のラウンドテーブルミーティングが開催されました。GJCFは、視神経脊髄炎(NMO)の原因究明と治療法開発を目的に、創設者であるビル・ガシー氏とビクトリア・ジャクソン氏夫妻による私財によって5年前に設立された財団です。全米の主な研究機関に研究助成を行っているほか、国際共同研究の推進、研究ミーティングの開催、講演会の開催、ウェブサイトや出版物を介したNMOの啓蒙活動などに取り組んでいます。これまでに財団の支援によって多くの研究成果が挙がっており、いくつかの新規治療薬の臨床試験も実際に始まっています。

今年のミーティングには、12カ国から75名の研究者が集まり、2日間にわたってNMOに関するいろいろな議論を交わしました。日本からは、東北大から中島と佐藤ダグラス、国立精神・神経医療研究センターから山村隆先生が参加しました。山村先生がご報告したIL-6受容体抗体トシリズマブによる臨床効果、特に痛みに対しての効果は非常に関心の高い話題のひとつでした。

トシリズマブ以外の新規治療薬の候補として以下のものが今回取り上げられていました。

1.エクリズマブ:血液中の補体成分、C5に結合するモノクローナル抗体で、補体依存性の細胞障害を抑える働きがあります。発作性夜間ヘモグロビン尿症ですでに認可されている薬剤です。メイヨークリニックが主体となって進めている臨床試験では非常に高い効果が示されたものの、高い薬価と、髄膜炎菌などによる感染症のリスクが問題になっています。

2.アクアポルマブ:アクアポリン4に結合する、補体活性化機能を持たないモノクローナル抗体で、血液中の抗アクアポリン4抗体がアクアポリン4に結合するのを阻害します。今後、臨床試験開始に向けて準備が進められる予定です。長期投与における中和抗体の出現の可能性などについて懸念が示されました。

3.バクテリア由来糖鎖切断酵素S(EndoS):病原性を持つ抗アクアポリン4抗体に作用し、 脱グリコシル化作用で補体依存性の細胞障害活性を失わせます。つまり、酵素の働きで病原性のある抗体を無毒化し、アクアポルマブと同様の機序でアクアポリン4を保護する薬として新たに開発されました。他の抗体も無毒化されるため、やはり細菌感染などのリスクが問題になりそうです。

4.シベレスタット:好中球由来のエラスターゼ活性を阻害する薬剤で、急性呼吸窮迫症候群に対して日本でのみ認可されている薬剤です。NMOの急性期病変の形成には好中球の関与も指摘されており、再発時に投与することで組織障害の程度を軽減できる可能性があります。

5.セチリジン:抗アレルギー剤として日本でも認可されている経口剤です。好中球と同様、NMOの急性期病変の形成に好酸球の関与が指摘されており、セチリジンがNMOの病変形成に抑制的に働くことが動物実験で確認されています。服用しておくことで、再発症状が軽減される可能性が指摘されています。

この他にも、リツキシマブ(抗CD20抗体)、血漿交換などの一般的な治療法の適用方法、抗アクアポリン4抗体の抗体価を含む疾患バイオマーカーの必要性とその候補などについて話し合われました。また同時に、NMOの新たな診断基準の確立のための話し合い、国際共同研究としての共通データベースの構築と、検体バンクの設立のための話し合いも進められました。


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by multiplesclerosis | 2012-10-26 10:08 | 学会報告

ECTRIMS 2012

f0183250_12472056.jpg2012年10月10日~13日の期間、フランスのリヨンで第28回ヨーロッパ多発性硬化症会議(ECTRIMS)が開催されました。年々規模が大きくなるECTRIMSですが、今年は7000人以上の参加があったようです。多発性硬化症というひとつの病気の診療と研究に関わる人のみが参加しているにもかかわらず、数日間で7000人以上も集まるのは驚異的です。当然、多発性硬化症の診療と研究に関するありとあらゆるテーマが議論の対象となり、MS以外の話題はありません。

リヨンは第1回のECTRIMSが開催された都市であり、この時は参加人数180人だったそうです。また、デビック病(NMO)のデビック先生の地元でもあります。

今年のECTRIMSは大きな話題に乏しかったものの、昨年日本でも承認されたフィンゴリモド(ジレニア/イムセラ)の他、今年アメリカで承認されたテリフルノミド、臨床試験中のラキニモド、BG-12、新しいS1P受容体作動薬のポネシモドなどの経口治療薬の臨床試験結果や展望についての講演が目立ちました。ポスター演題でも、フィンゴリモドの長期投与試験、ONO-4641を初めとするフィンゴリモド以外のS1P受容体作動薬の開発状況、テリフルノミド、ラキニモド、BG-12などの開発中の経口薬の良好な臨床試験結果が発表されていました。

f0183250_1247585.jpgNMOに関しては、精神・神経医療研究センター病院の荒木先生や山村先生が発表されたトシリズマブの再発予防効果が注目されていましたが、ルール大学からも、リツキシマブに治療抵抗を示した3例のNMOで劇的にトシリズマブが効いた、と発表がありました。今後の開発が期待されます。UCSFからはMSで開発中のアレムツズマブが効果を示したNMOの1例が報告されていました。同じくUCSFからは、NMOの病変形成に好酸球の関与を示唆する実験結果が報告され、その好酸球の抑制に、ある種の市販済みの抗アレルギー剤が有効であることも発表されていました。

新しい治療法がどんどん開発されていて、いずれも効果が高く期待はできますが、むしろこれだけオプションが増えると、高い効果よりも安全性が重視される傾向が強くなると予想されます。例えば、すでにドイツなどで長年乾癬治療に用いられているBG-12は胃腸障害が目立つものの重篤な副作用の報告がなく、次世代のMS治療薬として最も期待が高い印象です。また、高脂血症治療剤による進行抑制効果、ビタミンD製剤によるインターフェロンβとの相乗効果、イブジラストによる脳萎縮抑制なども報告されており、安く安全な治療法の開発も報告されていました。


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by multiplesclerosis | 2012-10-14 12:55 | 学会報告

Sendai Conference 2012報告

f0183250_7402865.jpg 平成24年7月14日~15日の2日間、仙台トラストシティでSendai Conference 2012を開催しました。海外からは、NMOの診断基準でおなじみのMayo ClinicのDean Wingerchuk、神経眼科が専門のブラジルのMarco Lana Peixoto、Oxford大学の神経内科専門医でMSやNMOを中心にコンサルタントをしているJacqueline PalaceとMaria Isabel Leite、ブリティッシュコロンビア大のAnthony Traboulsee、韓国で初めてMS専門外来を開設したHo Jin Kimの6人を招いて、それぞれの最新の研究内容を含めて講演をしていただきました。いずれの先生方とも共同研究を進めている間柄ということもあってか、忙しいにもかかわらず二つ返事で承諾していただき、何人かは旅費を自己負担してくれてまで参加してくれました。

f0183250_741699.jpg 海外からの演者はみんなフレンドリーでどんな質問にも丁寧に応えてくれていました。国内からは、新潟大の佐治先生、東北大の三須、金沢医大の田中先生、東北大の西山、山口大の清水先生、神経センターの山村先生に最新の研究内容を講演していただきました。また、一般演題として、8人の先生方に症例報告をしていただきました。いずれの症例も大変興味深く、質疑応答も沢山あって有意義な議論ができたと思います。海外のエキスパートからの診断や病態に関する意見は非常に参考になりました。

f0183250_7412864.jpg このカンファレンスの目的は、MSやNMOの診療にあたっている全国の神経内科医(特に若い先生方)に、国際会議を気軽に体験してもらう、臨床研究の興味を持ってもらう、海外研究者と交流してもらう機会を作ることでした。したがって、内容は研修医が聞いてもわかるようなもので、最新の難しい基礎研究の話はありませんでした。MSやNMOの最先端の研究をなさっているエキスパートの先生方にはもの足りない内容になったかもしれませんが、若い先生方には大いに刺激になったようです。多くの日本人の演者が英語での口演は初めてだったと思いますが、海外のエキスパートを前に皆さん堂々とすばらしい口演をしていただきました。
 懇親会ではBest Abstract Awardの表彰式も行い、大本命の宮本先生がしっかりと受賞されて、大いに盛り上がりました。(中島)


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by multiplesclerosis | 2012-07-16 07:53 | 学会報告

第53回 日本神経学会学術大会

f0183250_1332482.jpg5月22日から25日にかけて、東京国際フォーラムで第53回日本神経学会学術大会が開催されました。当講座スタッフは以下の発表を行いました。

1.シンポジウム:中枢神経を侵す難治性炎症性疾患の治療法の選択と最適化:Q&A
 「視神経脊髄炎」
 演者:中島一郎
2.ランチョンセミナー
 「多発性硬化症の新治療戦略-日本発世界初の経口剤フィンゴリモドの選択肢-」
 演者:中島一郎
3.口演:多発性硬化症②治療
 「多発性硬化症におけるインターフェロンβ中和抗体の陽性頻度と臨床的意義の解析」
 演者:中島一郎
4.口演:視神経脊髄炎
 「ヒトアストロサイト一次培養細胞に対する視神経脊髄炎患者IgG・補体の影響」
 演者:西山修平
5.口演:多発性硬化症③その他
 「腫瘍様炎症性脱髄性疾患におけるアストロサイト破壊性病巣」
 演者:高井良樹
6.ポスター:多発性硬化症と視神経脊髄炎②
 「NMOにおける非中枢神経系病変」
 演者:三須建郎
7.ポスター:多発性硬化症と視神経脊髄炎④
 「多発性硬化症と視神経脊髄炎における痛みの特徴とQOLに及ぼす影響の比較検討」
 演者:金森洋子

今回の学会における多発性硬化症に関連した一番の話題は昨年末に発売されたフィンゴリモド(イムセラ、ジレニア)で、国内の第2相試験の結果を斎田孝彦先生が、その長期試験結果を吉良潤一先生が発表されました。23日のイブニングセミナー、25日のランチョンセミナーでもフィンゴリモドに関連した講演やパネルディスカッションが開催され、質疑応答で盛り上がっていました。

f0183250_134194.jpgフィンゴリモドの国内試験において、抗アクアポリン4抗体陽性の患者さんで病態の悪化が見られたことから、現時点ではNMOの患者さんへの適用は避けるべきとされています。インターフェロンβもNMOには適用にならないことから、病初期におけるMSとNMOの鑑別が非常に重要になりますが、今回の学会では両者の鑑別が難しい症例や、診断における問題点を指摘する報告が目立ちました。新しい技術を用いたMRI撮像法の有用性の報告も興味深かったです。

今後もいくつか新しい治療法の開発が予定されていますが、適切な治療法を選択するための的確な診断と、正しい病態把握がより重要になってきます。

東京での開催は地方都市開催に比べると旅情に欠けますが、参加者が多く、いろんな人に会えるメリットがあります。


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by multiplesclerosis | 2012-05-26 13:47 | 学会報告

第20回 世界神経学会報告

f0183250_1351073.jpg 去る2011年11月12日から17日まで北アフリカの国モロッコの世界遺産の町マラケシュにおいて、第20回世界神経学会(World Congress of Neurology)が開催されました。仙台から成田、パリ、カサブランカと飛行機を乗り継ぎ、約30時間かけてマラケシュに到着しました。とにかく疲れました。北アフリカでは、このところアルジェリア、エジプト、リビヤなどの国々で民衆が蜂起(いわゆる“アラブの春”)し、ムバラク大統領やカダフィ大佐など長年にわたり国を支配してきた独裁者たちの政権が倒されましたが、モロッコは国王(ムハンマド6世)を元首とする立憲君主制国家であり、このような動きはまったくなく平穏でした。国内には8つのユネスコ世界遺産があり、マラケシュの旧市街もその一つです。マラケシュはベルベル語で「神の国」の意味で、人口66万人と国内第三の都市で、観光が主体の町です。街中の交差点にはそれぞれ警察官が立ち交通整理をしていました。交通信号はまったくなく、車の流れが途切れるのを見計らって道路を横断します(けっこうヒヤヒヤものです)。モロッコの食べ物としては、小麦粉を粒状にしたものを使った“クスクス”(Couscous)やとんがり帽子のような形をしたタジン鍋を使った鍋料理が有名です。当科から参加した黒田先生と一緒にこれらの料理を味わいましたが、いずれも日本人の口に合う味でした。

f0183250_13512792.jpg 世界神経学会は世界中の神経内科医が集まる国際学会であり、現在は2年ごとに大陸を移動しながら開催されており、2年前はタイのバンコク(アジア大陸)でした。今回は第20回という節目の会合でおそらく初めてアフリカで開催されたと思います。“アフリカと共に、アフリカのために”(With Africa, for Africa)をスローガンとして、6日間にわたり神経内科学のあらゆるトピックスを網羅する学会でした。123カ国から3200名の参加者があったそうです。日本からもたくさんの神経内科の先生方が参加されました。多発性硬化症(MS)は、脳卒中、てんかん、神経変性疾患、疼痛とともに5つの主要なトピックスの1つとなっています。

 私はMS、NMOに関する3つのセッションに参加しました。「神経可塑性と神経再生」のセッションでは、MSにおける脳の可塑性についてfunctional MRI(機能的磁気共鳴画像)の結果を紹介しました。MSのいずれの病型、病気でも、いったん脱髄病変ができると病変のない人に比べて脳のより広い部位を活性化させて、神経症状をできるだけ軽くしようとする脳の働き(これが脳の可塑性です)が動き出しです。これをうまく治療に活用して、機能障害を最小限に食い止めることが期待されます。また神経再生では、脱髄が起こった後に再髄鞘化を阻害する様々な因子があることを紹介し(慶応大学の中原先生たちが報告されたTIP30も紹介しました)、その中でLINGO-1というタンパクを抑制する抗体はMS病変の再髄鞘化を促進する治療効果が期待されています。欧州で既にこの薬の第I相の臨床試験が始まっているようです。

f0183250_1351524.jpg 「MS」のティーチングコースでは、MSとNMOの臨床、MRIなどの検査所見、病理学的所見や治療の相違、アクアポリン4抗体の意義などについてまとめて話しました。質問の時間には、参加者の先生方から具体的な症例の治療をどうするか、アクアポリン4抗体の測定などについてたくさんの質問をいただきました。そのほかケンブリッジ大学のコンプストン教授はMSの病態について詳細な知見を紹介され、最近の欧米で行われた大規模な遺伝子解析(GWAS)の結果から、MSはTリンパ球がその病態に重要であることが確認されたと報告されました。またECTRIMS(欧州MS学会)の会長であるフランスのクラネ教授が、今年発表された改訂マクドナルド診断基準(国際的に用いられているMSの診断基準)の要点を解説されました。特に病変の空間的多発、時間的多発に関するMRIの基準がより感度の高いシンプルなものに改訂されたことを強調され、より早期のMS診断が可能になり早期治療に結びつくことが期待されると述べられました。

 また「NMO」のセッションでは、私はNMOの臨床について話しましたが、ウイーン医科大学のラスマン教授やフランスのマリニエ先生からは、アクアポリン4抗体の病原性に関する実験的研究の最前線のデータが紹介されました。このユニークな自己抗体のNMOの病変形成における役割が徐々に明らかになっていますが、その他にラスマン教授はTリンパ球による炎症の必要性や中枢神経系以外に病変がおこる可能性など興味深い最近の知見も発表されました。
 
 とにかく長旅と3つの発表の準備で疲れましたが、世界の様々な先生方と会い議論することができたことはとても有意義でした。次回第21回世界神経学会は、2013年9月21日から26日までオーストリアの首都ウイーン(欧州大陸)で開催される予定です。日本からもたくさん参加してほしいものです。(藤原)


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by multiplesclerosis | 2011-11-23 19:29 | 学会報告

ガシー・ジャクソン慈善財団ミーティング

f0183250_15364221.jpg11月7日から10日にかけて、ロサンゼルス空港近くのホテルでガシー・ジャクソン慈善財団のミーティングおよびNMO患者集会が開催されました。今年で4回目となりますが、前回よりも参加者が増えて、今年は世界中から50名以上の専門家が集まり、NMOの研究および治療について連日議論が繰り広げられました。

7日は午後からNMOの新たな診断基準を制定するためのInternational Panelが開催されて藤原教授がメンバーとして参加し、夕方からは米国外からの参加者が沢山参加しての国際的なデータバンク、検体バンクの可能性・必要性・有用性について議論されました。検体バンクについては、倫理的な承認手続きの煩雑さが多くの国にとって大きなバリアーになるだろうということが再認識されました。

8日と9日のお昼過ぎまでは慈善財団から助成されている研究者がそれぞれ成果を発表し、日本、イギリス、カナダ、ドイツ、イタリア、フランス、ブラジル、オーストリア、アルゼンチン、イスラエルなどから1~2名ずつの研究報告がありました。日本からは藤原教授が東北大学の研究について紹介した後、国立精神・神経医療研究センターの山村先生と千原先生がプラズマブラストに関する最新の研究報告をされ、非常に注目されていました。メーヨークリニックからは臨床治験中のエクリズマブの効果が発表され、エントリーした14人のうち治療中に明確な再発をしたのは1例だけと、驚くような効果があることがわかりました。しかも、治療を中断すると数週間で再発した症例があったとのことで、明確な予防効果がありそうです。ハーバード大学のクチュルー先生によるIL-23を介した自然発症モデルや、UCSFとコロラド大の共同で開発したアクアポルマブ(変異型抗アクアポリン4抗体)に関する研究報告などでは会場が大いに盛り上がり、8日のスケジュールは1時間以上も遅れました。

9日の午後は、参加者が7つのテーブルに分かれて、9つのテーマについて議論する、恒例のroundtable meetingがあり、今年は治療、バイオマーカー、診断基準、国際共同研究、臨床研究、動物モデル、再生医療について議論されました。それぞれの肩書き(MD、PhD、教授、フェロー、など)や国籍は関係なく、対等な立場でざっくばらんに議論できるので、非常に有意義な機会な上に、他ではまず経験できません。また、一流の研究者の本音が聞けて、とても勉強になります。

f0183250_15373324.jpg1時間近く議論した後はテーマ毎に各テーブルでの議論内容が発表されます。最も盛り上がったのは、バイオマーカーの必要性についてで、抗アクアポリン4以外の疾患マーカー、活動性マーカーが今後の臨床研究には絶対的に必要だという共通認識が生まれました。当講座で報告した髄液のGFAP濃度は多くのテーブルで話題になったようですが、障害度や予後判定のマーカーとしては適当であるものの、再発を予想したり、活動性を評価できるものではありません。千原先生が報告した血液中のプラズマブラストの割合も活動性のマーカーの候補として話題になりましたが、経時的な変化の確認が必要です。これら以外のマーカーを探すためには、患者さんの協力が必要で、再発、寛解という時期に拘わらず、頻回に血液や髄液をサンプリングすることで、再発の予兆や疾患活動性と相関する変化を見落とさないようにしなければなりません。

臨床試験に関しては、エクリズマブの効果が予想以上で、とても期待できますが、あまりにも高い薬のために開発が進みそうにありません。臨床試験をまとめたメーヨークリニックの先生ですら、「病態がひとつ解明できたことは非常に良かったものの、治療薬として普及する可能性については否定的」という意見でした。むしろ、「国際的にプレドニゾロン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、リツキシマブの有効性、使用方法について共通した物差しで評価し直そう」というメーヨークリニックの呼びかけに対して、みんな賛同しているようでした。

会の最後には財団設立のきっかけとなったアレクサンドリア・ガシーも顔を出し、元気に素敵な笑顔を振りまいていました。(中島)


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by multiplesclerosis | 2011-11-09 15:46 | 学会報告

ECTRIMS2011報告

f0183250_1573710.jpgECTRIMSが、5th Joint Triennial Congress of ECTRIMS & ACTRIMSという形で10月19日から22日までオランダのアムステルダムで開催されました。参加人数は約7000人、演題数は1133題もあり、MSの診療・研究・創薬に携わる世界中の人たちが集まったと言えそうです。

今回のECTRIMSでは、フィンゴリモドの臨床試験のアドホック解析報告に注目しました。総じて、フィンゴリモドの効果、安全性について大きな問題点は現時点でないものと判断できそうです。インフルエンザワクチン接種も問題なさそうです。日本における12ヶ月の長期試験の結果も吉良教授によって発表されました。本試験で偽薬だった群に比べて、本試験から継続して実薬だった群で総じてMRIでの結果が良好で、継続投与の有効性と安全性が示されました。一方で、重度な再発を示した症例が抗AQP4抗体陽性であったことが判明するなど、NMOに対しての有効性は今のところ期待できず、適用にあったては鑑別に注意が必要です。海外からも腫瘍性病変を呈した症例報告がありました。

バイオジェンが開発中の経口薬BG12(フマル酸ジメチル)の第III相試験の結果が初めて報告され、2年間の投与における年間再発率を偽薬と比較して約50%減少させたほか、新規T2病変の出現が85%抑制され、新規造影病変の出現は90%抑制されたとのことです。副作用がほとんどない薬なので、期待が膨らみます。今後、日本での臨床試験の早期導入が期待されます。

f0183250_1575512.jpgNMO関連ではUCSFとコロラド大などとの共同研究で作成された、AQP4に対するモノクローナル抗体、Aquaporumabに注目が集まっていました。完全ヒト化IgG1抗体ですが、遺伝子操作で病理活性を全くなくしたそうで、動物モデルにおいてその効果が示されていました。月に一度の点滴注射でNMOの再発予防に用いる方向で開発を進めるとのことです。同じグループから、抗AQP4抗体とAQP4の結合をブロックする3種類の化合物の実験報告もあり、こちらは経口薬としての開発が期待できます。

アムステルダムは運河がとても発達した風光明媚な都市で、市内を散歩するのがとても楽しい街でした。会場から1.5kmほど離れたアムステル公園にたたずむ1台の風車(Rieker Molen)が印象的でした。(中島)


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by multiplesclerosis | 2011-10-22 15:38 | 学会報告

第23回 日本神経免疫学会学術集会

f0183250_22271510.jpg 新宿の京王プラザホテルで日本神経免疫学会の学術集会が開催されました。今年は会長である信州大学の高先生の取り計らいで、日本臨床免疫学会総会との合同開催となり、「免疫疾患学会連合2011」として開催されました。学会2日目は朝から晩まで合同シンポジウムが企画され、普段あまり聴くことがない、関節リウマチや炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎などの病態やこれら疾患の最新の治療の話題がたっぷり聴けて、とても勉強になりました。特に、関節リウマチにおける治療の進歩には驚かされました。MSの治療開発のスピードも速くなったとは思いますが、5年くらいは遅れている印象です。

 MSに関するシンポジウムで最も面白かったのは「日本人の多発性硬化症ではなぜ通常型が増加し発症が若年化したか」と題したシンポジウムで、九大の吉良教授、北海道医療センターの新野先生、精神・神経医療研究センターの三宅先生、名古屋大の薗部先生がそれぞれの研究の立場から持論を展開されていました。MSは欧米の高緯度地域に多いため、遺伝的要因の他に環境因子が関わっているのは間違いないところですが、それが何なのかははっきりしていません。食生活の変化(魚から肉、特に米国産牛肉消費量の増加、インスタント食品)とそれに伴う腸内細菌叢の変化、日光照射量の減少(ビル内での生活)、海外(西欧)生活歴の有無など、どれも怪しいものの根拠はまだ明確にはなっていません。

 基礎的な研究発表にも面白いものが沢山ありました。現在承認申請中のFTY720に関する基礎実験や、治療薬として開発中のPEG化インターフェロンの基礎実験など、臨床に密接したものが増えているのが印象的でした。FTY720は当初考えられていた作用機序以外の効果が指摘されてきており、薬剤としての有用性が益々期待されると同時に、思わぬ副作用が出てくる可能性が否定できません。特に、MS以外の疾患で誤用された場合や、コンプライアンス不良による悪影響が懸念され、その適用や投与には十分注意する必要があると再認識しました。
 
 NMOに関しては、抗AQP4抗体による補体依存性のアストロサイト障害が病態であるという認識はほぼ完全に共有された印象で、今後は治療法の開発、特に関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの全身性自己免疫疾患に対する様々な治療法の中から、いかに有用な治療法を見いだすかが重要になってくると思われました。(中島)


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by multiplesclerosis | 2011-09-17 23:17 | 学会報告
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