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カテゴリ:文献( 35 )

マクドナルドの診断基準の改訂

f0183250_748178.gif多発性硬化症の診断基準として国際標準になっているマクドナルド診断基準が改定され、Annals of Neurologyの電子版で掲載されています。

新しい診断基準のポイントは、MRIの基準がわかりやすくなったことです。診断の基本は、NMOなどの他疾患の除外と、空間的な多発性と時間的な多発性の証明です。

空間的な多発性は、下記のいずれかを満たせば証明されます。
1.異なる領域による2つの臨床症状
2.MRIにおいて、特徴的な領域(脳室周囲、皮質直下、テント下、脊髄)の2領域以上に1つ以上の無症候性のT2病変

時間的な多発性は、下記のいずれかを満たせば証明されます。
1.1ヶ月以上の間隔をおいた2つの臨床症状
2.発症時(初回)のMRIと比較して、再検したMRIで新たなT2病変の確認
3.発症時(初回)のMRIで2つ以上のT2病変があり、1つ以上の造影病変と1つ以上の非造影病変

また、一次進行型MSは1年間慢性的に進行する症状を示す症例で、下記3つのうちの2つを満たせば診断できます。
1.脳に9個以上のT2病変または脳の4個以上のT2病変とVEP異常
2.2つ以上の脊髄病変
3.髄液オリゴクローナルバンド陽性かIgGインデックスの上昇

2005年の診断基準に比べるとかなりわかりやすく、実践的になったと思います。これに合わせて、特定疾患の認定基準の見直しも進められています。(中島)

Diagnostic criteria for multiple sclerosis: 2010 revisions to the “McDonald criteria”
Ann Neurology 2011.DOI: 10.1002/ana.22366



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by multiplesclerosis | 2011-02-25 07:53 | 文献

酢酸グラチラマー使用中の妊娠・出産

酢酸グラチラマーglatiramer acetate(Copaxone®)は10年以上前から欧米で使われている多発性硬化症治療薬です。
(日本で現在治験中です)

この薬を使用している再発寛解型多発性硬化症の患者さんでの、妊娠・出産時の安全性と新生児の状態を解析したイギリスからの報告がJournal of Neurology誌に発表されました。

13人の患者さんが妊娠時に酢酸グラチラマーを使用しており、うち9人は出産するまで酢酸グラチラマーを継続しました。
のべ14妊娠があり、13児(1組は双生児)が無事出生、流産は2例のみで一般人口における流産率(15~20%)との差はありませんでした。
妊娠期間中の再発は1例1回のみ、出産後半年では2例でのべ3回の再発がありました。

新生児の平均体重は3318gで、明らかな奇形は認められませんでした。
低出生体重児は2例3児で認められ、1例目は双子、2例目は妊娠28週で再発を認めた例でした。
(疾患活動性が高いと低体重児が多くなることは他の論文で発表されています)

より多くの患者さんでの結果が必要ですが、妊娠前に再発予防薬を中止することのリスクを考えると、活動性の高い患者さんでは酢酸グラチラマーを妊娠出産期間中でも比較的安全に使用できそうです。(西山)

Glatiramer acetate exposure in pregnancy: preliminary safety and birth outcomes.
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by multiplesclerosis | 2010-12-21 18:02 | 文献

アボネックスの15年間長期投与効果

週に1回の筋注製剤であるアボネックスでも15年間の長期投与の解析がMultiple Sclerosis誌の先月号で報告されています。

この報告では、15年間アボネックスを継続した患者さんでは、継続していない患者さんと比較して重症度が低く、QOLスコアが高かったことを示しています。また、15年間継続していた症例は初めの治験で実薬だった症例が多かったようです。

アボネックスの長期投与による病気の抑制効果が示されていると考えられますが、中止した症例の一部はアボネックスで活動性が抑えられなかったことも示唆しています。今後は早期に治療反応群と反応不良群の見極めが必要であると述べられています。

一方、15年間で目立った副作用の発現はなく、安全性も実証されたと報告しています。

Intramuscular interferon beta-1a therapy in patients with relapsing-remitting multiple sclerosis: a 15-year follow-up study


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by multiplesclerosis | 2010-06-15 15:54 | 文献

ベタフェロン長期投与の安全性

Neurologyの今週号に、ベタフェロンの長期投与(16年)における安全性に関する解析の報告が記載されています。

ベタフェロンの有効性を解析したもっとも代表的な5年間の第3相多施設プラセボ対照比較試験に参加した372人のMS患者さんを16年後に状況調査をし、88.2%の328人の状況を把握し解析しています。5年間の治験終了後の治療内容はまちまちですが、それによる違いは解析していません。

ベタフェロンの長期投与中の副作用は、肝機能障害、リンパ球減少、甲状腺機能異常など、これまでに良く知られたもの以外で目立つものはなく、長期投与特有の障害はみられませんでした。

治験中に中和抗体が認められた症例の76%では16年間の長期投与中に消失しており、治験中の中和抗体出現の有無による長期予後の差はありませんでした。

治験においてプラセボ投与だった群と比較して、実薬だった群において有意に死亡した症例の割合が少なく、早期投与開始が長期予後に悪影響を与えることは全くありませんでした。

今後、インターフェロン・ベータより有効性の高い治療法の開発が進むと思いますが、それらと比較すると、インターフェロン・ベータの長期投与は極めて安全であり、MSの進行予防として第一選択に考えるべき治療法であることは当分変わらないでしょう。

A.T. Reder, et al. Cross-sectional study assessing long-term safety of interferon-β-1b for relapsing-remitting MS. NEUROLOGY 2010;74:1877-1885


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by multiplesclerosis | 2010-06-10 21:39 | 文献

イブジラスト(MN166)の神経保護作用

イブジラスト(MN-166)の再発寛解型多発性硬化症に対する1年間のプラセボ対照無作為割当二重盲検試験(フェーズ2)の結果がNeurologyに発表されました。

異なる2つの用量(30mgと60mg)と偽薬の3群にわけての1年間の解析で、1次評価として毎月の脳MRIにおける新規病変の出現数を比較しています。2次評価では年間再発率、重症度の変化、T2病巣面積の変化、T1病巣面積の変化、脳萎縮の進行を比較しています。

結果として、脳MRIにおける新規病変の数、年間再発率、重症度の変化、T2病巣面積の変化では各群に差はなく、イブジラストによる再発抑制効果は明らかではありませんでした。

一方、T1強調画像でブラックホールに至る活動性病変の割合や、脳萎縮の進行の程度には有意差があり、イブジラストの効果の可能性が示唆されています。

さらに、2年間での解析では、イブジラスト服用群で重症度が進行しない症例の数が多かったと報告しています。

イブジラストは再発抑制よりも、脳萎縮につながる神経変性をいくらか予防できる可能性があり、今後症例数を増やしたフェーズ3の臨床試験による解析が必要だとしています。

日本でも古くから脳梗塞後遺症や気管支喘息などに対する治療薬として用いられており、その安全性は確立している薬なので、少しでも効果があるのであれば補助的な薬としてとても有用と思われます。

Barkhof F, et al. Ibudilast in relapsing-remitting multiple sclerosis. A neuroprotectant? Neurology. 2010 Mar 3. [Epub ahead of print]


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by multiplesclerosis | 2010-03-07 10:36 | 文献

低用量ナルトレキソン療法によるMSのQOL向上

ナルトレキソンは、海外では以前から麻薬中毒やアルコール依存症の治療薬として用いられてきた薬で、日本では販売されていません。麻薬の一種ですが、他の麻薬系薬剤やアルコールの受容体への結合を阻害します。痛みに対する治療としても用いられています。

ナルトレキソンナルトレキソンを非常に低用量で内服することで、抗腫瘍効果が認められると報告され、抗癌治療の補助薬としても現在注目されている薬剤です。

アメリカのUCSFのMSセンターのグループが、この低用量ナルトレキソン療法を多発性硬化症患者80人に対して、40人ずつのトータル17週間(8週間ずつ)のクロスオーバー試験を行い、Annals of Neurologyの電子版に報告しています。

評価にはSF-36というQOLの評価尺度を用いており、治療前後におけるSF-36の変化を解析しています。結果は、ナルトレキソン投与群で有意に「心の健康」尺度における改善が見られたそうです。MS患者さんのQOLを向上させる究極の対症療法と言えますが、長期投与における安全性は全く不明です。

さらに注目したいのは、この臨床試験の経済的サポートを患者さんが行っているということです。

Cree B, et al. Pilot trial of low dose naltrexone and quality of life in MS. Ann Neurol 10.1002/ana.22006 (Published Online: 19 Feb 2010)


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by multiplesclerosis | 2010-03-04 19:29 | 文献

ダクリズマブのインターフェロンβ併用効果

ダクリズマブ(Daclizumab)は活性化リンパ球表面に存在するCD25と呼ばれる分子に対するモノクローナル抗体製剤で、IL-2というサイトカインの影響を止める作用を持ちます。ダクリズマブをMS患者に投与(皮下注射)すると、制御性のNK細胞の割合が増大することが明らかになっており、自己反応性のT細胞を間接的に抑制して病態を改善する可能性が指摘されていました。

ダクリズマブ今回、アメリカ、カナダ、ドイツ、イタリア、スペインにある51の多施設共同の第2相臨床試験が実施され、230人のインターフェロンβ投与中にも拘わらず活動性のある患者さんを、1) インターフェロンβ+ダクリズマブ高用量(2mg/kg)を2週間間隔で11回投与、2) インターフェロンβ+ダクリズマブ低用量(1mg/kg)を2週間間隔で6回投与とインターフェロンβ+プラセボを2週間間隔で5回投与、3) インターフェロンβ+プラセボを2週間間隔で11回投与、の3群にわけて24週間のMRIの比較解析を行った結果がLancet Neurologyの4月号に記載されることになりました。

MRIにおける新規造影病変の数は、プラセボ群で平均4.75個であったのに対し、ダクリズマブ高用量群では1.32個に減少し、ダクリズマブ低用量群では3.58個であったと報告されています。

ダクリズマブの併用により末梢血のT細胞数、B細胞数、NK細胞数に変化はなく、T細胞の増殖能も変化がなかったそうですが、制御性のNK細胞の比率はプラセボ群と比較して7-8倍増加しているのが確認されています。

24週間という短い期間でのMRI評価による結果ではありますが、かなり有望な治療法として注目されます。長期的な予防効果や安全性の問題を確認するためにはさらに長期間の第3相試験が必要になりますが、十分期待できる製剤という印象です。

Wynn D, et al. Daclizumab in active relapsing multiple sclerosis (CHOICE study): a phase 2, randomised, double-blind, placebo-controlled, add-on trial with interferon beta. The Lancet Neurology doi:10.1016/S1474-4422(10)70033-8


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by multiplesclerosis | 2010-02-17 12:37 | 文献

FTY720とクラドリビン

1月20日付けのThe New England Journal of Medicine電子版でMSの経口治療薬の臨床試験結果に関する3つの論文が同時に掲載されました(フリーアクセス)。

1つはノバルティス社(日本では田辺三菱製薬と共同)が開発するFTY720(フィンゴリモド)錠で、2年間の第3相プラセボ対照比較試験(FREEDOMS試験)であり、もう1つはFTY720のアボネックスとの1年間の第3相比較試験(TRANSFORMS試験)、残りの1つはメルク社が開発する経口クラドリビン錠の2年間の第3相プラセボ対照比較試験(CLARITY試験)です。

これらの結果については以前にもご紹介していますが、いずれの試験においても有意な再発率の減少と疾患活動性の抑制が示されており、重篤な副作用が稀に見られるものの、インターフェロンに代わる可能性のある薬剤として非常に有望で期待されます。

いずれの薬剤も昨年末にアメリカやヨーロッパで承認申請が行われており、2年以内の発売を目指しています。

A Placebo-Controlled Trial of Oral Cladribine for Relapsing Multiple Sclerosis. NEJM. Published at www.nejm.org January 20, 2010 (10.1056/NEJMoa0902533)

Oral Fingolimod or Intramuscular Interferon for Relapsing Multiple Sclerosis. NEJM. Published at www.nejm.org January 20, 2010 (10.1056/NEJMoa0907839)

A Placebo-Controlled Trial of Oral Fingolimod in Relapsing Multiple Sclerosis. NEJM. Published at www.nejm.org January 20, 2010 (10.1056/NEJMoa0909494)


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by multiplesclerosis | 2010-01-22 08:47 | 文献

韓国における再発性脊髄炎

韓国では日本と同様にMSに対するNMOの比率が高いことが分かっています。
さらに、NMOと同じような長い病変を呈する横断性脊髄炎だけを繰り返す患者さんも多く、それらの多くが男性であることも分かっています。

そして、この再発性脊髄炎では抗AQP4抗体が陰性であり、視神経炎の合併もないことからNMOとは異なる病態機序が指摘されています。今回、ソウル大学校医学部のLee教授らが再発性脊髄炎の20例をまとめて報告しています。

あいにく当院では同じような症例の経験がないので、日本人における頻度については全くの不明ですが、ほとんど認識されてないように思います。

抗AQP4抗体の発見によってNMOが独立した疾患として確立したように、まだまだ多くの疾患がMSやOSMSには含まれており、これらの疾患が独立した概念として早く確立されていくことが望まれます。

男性における再発性の横断性脊髄炎は新たな疾患概念を強く考えさせられる貴重な報告です。

Kim SH, et al. Clinical characteristics, prognosis, and seropositivity to the anti-aquaporin-4 antibody in Korean patients with longitudinally extensive transverse myelitis. J Neurol. 2010 DOI 10.1007/s00415-009-5438-2


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by multiplesclerosis | 2010-01-09 09:54 | 文献

抗アクアポリン4抗体の病原性

昨年11月のGuthy-Jackson慈善財団主催のroundtableカンファレンスでUCSFのAlan Verkman教授が発表されたNMOの動物モデルの研究がBrainのon-line版で報告されています。これはイギリスのロンドン大学、オックスフォード大学、アメリカのUCSFの共同研究です。

以前のブログでも紹介しましたが、この研究はNMOにおける抗アクアポリン4抗体の病原性を証明するとても意義のある研究成果です。

この研究では、NMO患者の血清から抽出したIgGをヒト補体と同時にマウスの脳に直接接種することで、12時間後にはアクアポリン4の欠失を主体とするNMOの病変が形成され、7日後には病変由来の臨床症状を呈したと報告しています。

当然ながら、NMOでない人のIgGでは発症せず、アクアポリン4を欠損するマウスでも発症していません。また補体が同時に接種されなければ発症せず、補体がNMOの病変形成に不可欠であることを示唆しています。

これまで、NMOの病変を形成するには炎症を惹起する自己反応性のT細胞の存在が不可欠と考えられていましたが、抗アクアポリン4抗体と補体が中枢神経に存在するだけで病変が形成されることを証明しており、補体依存性ではありますが、抗アクアポリン4抗体単独の病原性が明確になりました。

今回の研究報告から更に明らかになったことは、NMOの治療ターゲットとして、1.抗アクアポリン4抗体の除去か産生阻止、2.補体の除去、3.抗アクアポリン4抗体の中枢神経への移行阻止の3つに重点をおくべきであるということだと考えます。

Saadoun S, et al. Intra-cerebral injection of neuromyelitis optica immunoglobin G and human complement produces neuromyelitis optica lesions in mice. Brain Advance Access published on January 4, 2010.


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by multiplesclerosis | 2010-01-05 09:53 | 文献
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