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第38回日本免疫学会総会報告

12月1日から3日間、京都の国立京都国際会館で第38回日本免疫学会総会・学術集会が開催されました。免疫学会の会員は基礎研究者を中心に約5400名いて、約2600名が今回の学術集会に参加しています。学会発表の内容はかなり基礎的で専門的なものが多いのでしばらく足が遠のいておりましたが、今回約10年振りに参加しました。
他のいくつかの学会と同様、この学会の12あるシンポジウムはすべて英語で発表され、進行やディスカッションも英語で行われます。外国人の聴衆はほとんどが招待演者か日本にいる留学生ですが、かなり国際化が進んだ学会と言えます。ポスターや抄録も原則英語で作成することが求められており、参加するにも英語力が必要です。驚いたことに、スポンサードセミナーも通訳なしに英語で講演していて、外国の学会に参加している感覚でした。おかげで、日本語でさえ理解が難しい内容の発表ばかりなのに、英語で発表されては余計に難しく、途中で眠くなることが多々ありました。
第38回日本免疫学会総会報告_f0183250_23514297.jpg
ところで、今回の学会賞は東京医科歯科大学免疫アレルギー学分野の峯岸先生が受賞されていました。受賞演題は「原発性免疫不全症の病因・病態の解明」で、その受賞講演はとても印象深いものでした。たった1例の免疫不全を示す高IgE血症(2型高IgE症候群)の解析でチロシンキナーゼ2(Tyk2)という酵素欠損を見出し、さらにその酵素の働きから発展させて1型高IgE症候群の原因を追及し、その原因遺伝子がSTAT3であることまでも見出されています。これらの遺伝子異常は両親に認められないことからde novoの遺伝子変異であり、通常の連鎖解析では見出すことができない遺伝子異常で、そのことがこれまで原因が解明されなかった要因であったようです。どちらかと言えば、分子生物学的な成果での受賞ではあるのですが、峯岸先生は15年間臨床をされてからの基礎への転身のようで、1例を大事にされての大きな成果にとても感心しました。

また、免疫学会では一般社会へのリーチングアウトの一環として、「免疫ふしぎ未来」というイベントを通して啓蒙活動をされていますが、この催しに参加される免疫学者の先生方にとっても自分の研究を見つめ直すいい機会になっているようです。
これからの基礎研究は社会にどう貢献できるかも重要な要素になるであろうことは間違いなく、研究者の自己満足を満たすためだけのマニアックな研究ではサポートを受けにくくなることが予想されます。一般人からのアンケートでも、免疫学会に求めることの1番目は「難しい病気を治してほしい」だそうです。今回の学会では、トランスレーショナルリサーチと呼べる研究発表はほとんど見当たらず、相変わらず動物免疫の研究が多いのですが、少しずつ臨床に直接結びつく研究が増えて行って、多発性硬化症などの自己免疫疾患の病態解明に基礎の先生たちのアイデアが入ってくると素晴らしいことだろうと思います。中島
by multiplesclerosis | 2008-12-02 23:52 | 学会報告
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