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WCTRIMS学会報告

2008年9月17日~20日にカナダのモントリオールで開催された第1回多発性硬化症の治療と研究に関する世界会議(World Congress of Treatment and Research in Multiple Sclerosis: WCTRIMS)に参加してきました。今回のWCTRIMSは、第24回ヨーロッパ会議(ECTRIMS)、第13回アメリカ会議(ACTRIMS)、第5回ラテンアメリカ会議(LACTRIMS)を兼ねており、世界中から約3500人のMS研究者が集まって、約1000題の一般演題と35題の教育講演、約40題のサテライトシンポジウム講演が発表されました。
演題内容は治療に関するものが多いですが、基礎実験や検査法に関するものも含まれます。

今回の会議で印象的だったのは視神経脊髄炎(NMO)のセッションが盛況だったことと、メーカー共催のサテライトシンポジウムが多かったことでした。NMOのセッションではドイツのハンズ・ラスマン教授が東北大学との共同研究による動物モデルの実験結果を発表され強いインパクトを放っておりました。Mayoクリニックのディーン・ウインガチェックによるNMOの治療法のまとめは非常にわかりやすく良くまとまっていました。

MSの治療に関しては、Natalizumab(Tysabri)に関する報告が多く、特に進行性多巣性白室脳症(PML)の合併に関して多くの報告が見られました。インターフェロン(ベタフェロン、アボネックス、レビーフ)に関する長期投与の有用性に関する発表も多く、特にベタフェロンに関しては16年間の長期投与の有用性と安全性について報告され、多くのメディアでも取り上げられていました。

今後の治療に関する注目としては、モノクローナル抗体治療と経口薬の開発が挙げられます。抗体治療の中ではAlemtuzumab(Campath)が、インターフェロンβ-1a(Rebif)との比較第2相試験において圧倒的な有効性を示したことで、世界的な第3相試験に向けて大きく動き出したことが印象的でした。残念ながら日本における治験の動きはまだありません。

MSの病態におけるB細胞の役割も注目されています。特にRituximab(Rituxan)によって末梢血のB細胞をなくすと病態が良くなることが示され、新たなB細胞を標的とした治療法としてAtacicept(TACI-Ig)も大いに注目されていました。現在数種類(プラセボ比較試験、インターフェロン比較試験など)の第2相試験が進行しているようです。

FTY-720(fingolimod)をはじめとするいくつかの経口薬の多くも第2相試験でいい結果を出しており、第3相試験の結果が非常に楽しみです。FTY-720は日本でも第3相試験が進行しています。

約半年ぶりのモントリオールでしたが、とても充実した訪問になりました。留学していたラボのミーティングにも参加し、今後の共同研究に関してもいいディスカッションができました。留学中に知り合った多くの研究者にも会うことができ、改めて人のつながりの重要性を感じました。中
WCTRIMS学会報告_f0183250_22441645.jpg

東北大からの参加メンバー、留学先のラボのメンバーとイタリアンレストランで
by multiplesclerosis | 2008-09-23 22:57 | 学会報告
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