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Guthy-Jackson慈善財団ミーティング

f0183250_18355220.jpg11月9日から11日にかけて、ロサンゼルスのビバリーヒルズにあるThe Tower Beverly Hills HotelでGuthy-Jackson慈善財団主催のroundtableカンファレンスが行われ、約50名の神経内科医、免疫学者などが集結しました。

財団から研究助成金を受けているMayo Clinic、UCSF、Stanford、Johns Hopkins、UTSWなどから1年間の研究活動報告があったほか、日本とイギリスのOxford、Walton centerからそれぞれの研究内容が発表されました。(プログラムはこちら)

日本からは中島と神経センターの山村先生が参加しました。私はこれまでの東北大でのNMO研究の10年間の成果を発表し、日本では古くからOSMSの研究が盛んであったこと、NMO-IgGの発見によってOSMSの多くはNMOであることが判明し、日本ではMSに対するNMOの割合が多いこと、NMOの病態はアストロサイトの障害が主体であること、髄液GFAP濃度が再発時に著増すること、ステロイドパルスと血漿交換の併用が再発治療に有効で血清抗AQP4抗体価が低下すること、少量のプレドニン内服治療で再発予防が可能であり、安定した時期では抗AQP4抗体価が比較的低いことなどを発表しました。予想以上に反響があり驚きました。

f0183250_0367.jpg研究助成を受けた研究者の活動報告の中ではUCSFのAlan Verkman教授の発表が刺激的でした。Verkman教授らはコロラド大のJeff Bennett助教と協力し、NMOの患者髄液中のB細胞の遺伝子から作成した人工の抗AQP4モノクローナル抗体を用い、直接マウスの脳に接種して反応を見ています。抗体だけの注入では病理学的に有意な変化が見られないものの、ヒト活性補体を同時に注入するとNMOの病理が見られたとしています。

また、Verkman教授は抗AQP4抗体とAQP4の結合を阻害する人工低分子化合物をハイスループットな手法で300,000以上の候補からスクリーニングし、2個の低分子化合物を同定したと発表しました。どのような化合物かは述べていませんでしたが、特効薬開発につながる可能性があり期待できます。またすでに自然界に存在する6,500以上の化合物のスクリーニングにおいても、南米産の植物由来の物質が有望とのことでした。

さらに、Verkman教授は最近The Journal of Biological ChemistryにJeff Bennett助教との共同論文を発表しており、アストロサイト上のAQP4がM1フォームとM23フォームの比率を調整して膜状の直行配列格子の大きさを規定していることを実証しています。抗AQP4抗体は直行配列格子を形成するAQP4を認識しやすいとされており、抗AQP4抗体が働くメカニズムの解明や動物モデルの作成にもつながる成果と考えられます。

UTSWのBen Greenberg助教は全米でのNMOの患者登録システムと、数種類の治療プロトコルの共同臨床試験を提案し、早期の治療ガイドラインの作成の必要性を訴えていました。多くの参加者からは時期尚早との意見もあり、個々の施設での治療経験をまとめるのが先決ではないかと考える研究者がまだ多いようでした。

他の施設からの研究報告も目覚ましいものばかりで、そのほとんどで動物モデルの研究が進んでいたのがとても印象的でした。治療法開発に動物モデルの作成は必要不可欠であり、そんなに遠くない将来に有望な治療法が見出される可能性を感じました。

f0183250_18404285.jpg財団の創設者であるVictoria JacksonはNMOの治療法開発に積極的にバックアップすることを明言しており、数百万ドル規模での研究助成が少なくとも今後2年間は続けられる予定だそうです。NMOのような希少な疾患にこのような多額の助成が行われることは幸運と言えるかもしれません。また、このような莫大な研究費をつぎ込めばそれなりに速いスピードで研究が発展することが実感できました。

今回のミーティングはクローズな会でしたが、顔見知りが多く参加していたのでとても気楽に過ごすことができました。10日の夜にはMayo Clinicの旧知のドクターたちとハリウッドに繰り出しチャイニーズシアターやコダックシアターを見学してきました。


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by multiplesclerosis | 2009-11-14 18:29 | 学会報告
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