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視神経脊髄炎(NMO)と多発性硬化症(MS)の関係は?-討論@WCN 2009

バンコク(タイ)で第19回世界神経学会(WCN 2009)が開催され、藤原教授とともに行ってきました。我々の担当するそれぞれの講演や座長などが次々とあったため、ゆっくりとする時間はほとんどありませんでしたが、多くの先生方と話す機会もあり非常に充実した学会であったと思います。既に藤原教授から報告があったように、学会自体は天候にも恵まれ盛況であったと思います。

我々はアクアポリン4抗体の発見以後、この抗体がNMOの原因として確からしいかどうかを多面的に検討してきましたが、今回その成果の一部について、与えられたテーマ『Aquaporin-4 Autoimmunity (アクアポリン4の自己免疫現象)』(2009.10.27 MS 2 11:00-12:30)という演題名で発表してきました。その中では、①NMOは病理学的にアクアポリン4やアストロサイトの脱落を認めるアストロサイト障害性の疾患であること、②神経の髄哨(ずいしょう)の脱落(脱髄)を主体とするMSとは異なる特徴を有する疾患であること、③アクアポリン4抗体は、抗体の作用機序に関する様々な実験によりNMOを発症させる原因として確からしい証拠が数々出てきていること、などを発表してきました。自分のSessionでは、他にドイツのHohlfelt教授がMSにおける免疫病態について、米国のRodriguez教授がMSの再生治療について話されました。

<NMO vs MS 討論@WCN2009>
従来からNMOはMSという一つの疾患単位の中の特殊型であると考えられてきました。今日に至るまでMSの原因は不明なままですが、近年NMOにおいてアクアポリン4抗体が発見されたことによって、MSとは異なる疾患ではないかという考え方が受け入れられつつあります。今回のWCNでは、その点における企画討論(Debate “Devic’s NMO and MS are different or not” by Prof. Compston vs Prof. Lennon)(2009.10.27 16:00-17:00) に注目が集まりました。

Alastair Compston教授(ケンブリッジ大学)は、英国の有名な神経学雑誌Brainの編集長をされている言わば学会のご意見番のような方で、聞くところでは討論をさせたら右に出るものはいないというほどの方。一方、Vanda Lennon教授(メイヨークリニック)はアクアポリン4抗体を発見したご当人。討論は、Compstonが「私は女性と戦うのは好きではないが」などと言いながら首を絞める真似をしてLennonが舌を出してオドけるといった和やかなPerformanceで始まった。Compstonは、①MSもNMOも同じ神経系に病変の出る疾患であること、②日本においてNMOが減ってMSが増えている現状は同じ民族の間で病型が変わった連続的な疾患である証拠、③MSは髄哨だけでなく広く障害される疾患、であることなどから、NMOとMSは同じ疾患だと主張。一方、Lennonは、①アクアポリン4抗体が極めてNMO特異的抗体であること、②病理学的にもアクアポリン4が関連することが明らかであること、③アストロサイト障害が関連するMSとは異なる範疇の疾患である、などを主張された。前後で、両者への支持率が挙手にて示されたが、討論の前後でおおむね変化はなくLennon派が7割、Compston派が3割という程度でしたが、若干増えたということで軍配はCompston教授に上がっていました。このような形式の討論は初めて見ましたが、学問的というより討論能力の善し悪しにウェートがあったという印象と、あくまで臨床的な理解を向上することが目的であって勝ち負けは関係ないとは思いましたが、現状での色々な考え方を聞く上では極めて重要な討論であったといえます。

f0183250_2453758.jpg 翌日10.28には、ウィーン大学のLassmann教授がMS病理における多様性について話されMSは多様性のある疾患であるが、その中においてNMOは極めて異質の疾患であることをNMO-IgGを導入した疾患モデルの結果を用いて話されていました。続いてPrineas教授は、MSとNMOにおける特徴と題して話され、NMOにおけるアストロサイト及びアクアポリン4の脱落病変は特徴的でMisu-typeと表現されていたのが印象的でした。また、アストロサイト障害はMSも含めた脱髄現象を考える上で重要であることを話されましたが、時間の関係でMS関連のお話が最後まで聞けなかったのが残念でした。

今回の学会に参加して、MSという疾患は非常に多様な考えを持った人がいると改めて感心しつつ、良くも悪くもMSとNMOという二者の違いを明らかにしていくことが大きな波を生んでいる現実を肌で感じることができました。いずれにせよ、MSの多様性やNMOとの病態の違いを理解し、病態毎の適切な治療法の理解を進めていくことが何よりの近道であると感じています。

三須建郎 November 3, 2009
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by multiplesclerosis | 2009-11-03 22:00 | 学会報告
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