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第61回米国神経学会議年次集会(AAN)

4月25日から5月2日にかけて、アメリカのシアトルで第61回のAmerican Academy of Neurology (AAN) の年次集会が開催され、参加してきました。

第61回米国神経学会議年次集会(AAN)_f0183250_1141662.jpgほぼ毎年この集会には参加していますが、シアトルでの集会に参加するのは初めてです。成田空港からはUnitedとNWが直行便を出しており、飛行時間が約9時間と比較的短く、他の北米都市に比べて日本からの参加は便利だったと思います。

この集会は基礎的な研究よりも臨床研究を重視しており、多くの臨床研究の結果や経過がこの集会で発表されるため、医師のみならず、製薬メーカーや創薬メーカー、機器メーカーなどの研究者も挙って参加し、一大フェスティバルのような状況でとても賑やかです。

学会期間は8日間ですが、真ん中の3日間で学術集会を行い、他の5日間では主に教育プログラムが行われます。学術集会では2000題以上の学術発表が行われましたが、採択率が50%以下で、選りすぐられた演題のみが発表されるために他の学会のように聴いてて飽きることがありません。

多発性硬化症に関する演題は380演題くらいありましたが、口演に選ばれたのは58演題(NMOに関するものは3題)のみで、そのうちの一題に我々の演題が選ばれ発表してきました。MS Immunology IIというセッションで、「NMOの末梢血B細胞からの抗アクアポリン4抗体産生」というタイトルで発表しましたが、選んでもらった座長のUCSFのScott Zamvilには本当に感謝したいと思います。発表後、NMOにおける抗アクアポリン4抗体産生の仕組みの解明や治療法開発に繋がる重要な研究との評価をいただきましたが、同時に、より詳細な解析が必要であるとのコメントを多くの人からいただきました。UCSFやチューリッヒ大学、コロラド大学の顔馴染みの研究者たちから共同研究に誘われたりもして、予想以上の反響にとてもうれしく思いました。

また、ポスターで「NMOにおける血漿交換療法の有効性」について発表を行い、これについても多くの賛同がありました。NMOの再発にはステロイドパルス治療が有用ですが、効果が乏しい場合にはできるだけ早く単純血漿交換療法を行うことで改善効果が高いことを示した発表です。抗アクアポリン抗体価の変動を示したことで説得力が増し、抗アクアポリン4抗体価の低下が治療の指標として重要であることが多くの人に理解してもらえて、とても有意義でした。MayoのVanda Lennonも熱心に聴いてくれて、お世辞だとは思いますが、素晴らしい発表だと褒めてくれました。

第61回米国神経学会議年次集会(AAN)_f0183250_1155499.jpg他のMSに関する演題の中では、RRMSに対するFingolimod(FTY-720)やCladribine、PPMSに対するRituximabの治験結果の発表などに注目が集まっていました。FingolimodやNatlizumabの髄鞘再生作用が培養実験やMRI解析で明らかにされ、これらの薬剤にはMSの再発防止効果だけでなく、脱髄を修復する作用があることが示されました。また、新しいAtaciceptという薬剤(TACI-Ig)はMSの再発予防に対するPhase IIが進行中ですが、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)での治療効果が示され、末梢血B細胞が減少するものの、メモリー型B細胞が影響を受けにくいとのことで安全性に優れている可能性が指摘されていました。

ポスター演題では、Rebifの15年間の長期投与成績、Natlizumabの臨床効果や安全性に関わる発表、種々の薬剤の併用効果などの発表が目立ちました。NMOに関する発表では、フランスのJerome de SezeのグループがNMOの臨床に関する5題の発表を行い、その影響力を示していました。Jeromeとは2年ぶりに再会しましたが、今度は10月に日本に来てくれる予定なので、またお会いできるのが楽しみです。(中島)


by multiplesclerosis | 2009-05-03 10:50 | 学会報告
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