第53回 日本神経学会学術大会
5月22日から25日にかけて、東京国際フォーラムで第53回日本神経学会学術大会が開催されました。当講座スタッフは以下の発表を行いました。1.シンポジウム:中枢神経を侵す難治性炎症性疾患の治療法の選択と最適化:Q&A
「視神経脊髄炎」
演者:中島一郎
2.ランチョンセミナー
「多発性硬化症の新治療戦略-日本発世界初の経口剤フィンゴリモドの選択肢-」
演者:中島一郎
3.口演:多発性硬化症②治療
「多発性硬化症におけるインターフェロンβ中和抗体の陽性頻度と臨床的意義の解析」
演者:中島一郎
4.口演:視神経脊髄炎
「ヒトアストロサイト一次培養細胞に対する視神経脊髄炎患者IgG・補体の影響」
演者:西山修平
5.口演:多発性硬化症③その他
「腫瘍様炎症性脱髄性疾患におけるアストロサイト破壊性病巣」
演者:高井良樹
6.ポスター:多発性硬化症と視神経脊髄炎②
「NMOにおける非中枢神経系病変」
演者:三須建郎
7.ポスター:多発性硬化症と視神経脊髄炎④
「多発性硬化症と視神経脊髄炎における痛みの特徴とQOLに及ぼす影響の比較検討」
演者:金森洋子
今回の学会における多発性硬化症に関連した一番の話題は昨年末に発売されたフィンゴリモド(イムセラ、ジレニア)で、国内の第2相試験の結果を斎田孝彦先生が、その長期試験結果を吉良潤一先生が発表されました。23日のイブニングセミナー、25日のランチョンセミナーでもフィンゴリモドに関連した講演やパネルディスカッションが開催され、質疑応答で盛り上がっていました。
フィンゴリモドの国内試験において、抗アクアポリン4抗体陽性の患者さんで病態の悪化が見られたことから、現時点ではNMOの患者さんへの適用は避けるべきとされています。インターフェロンβもNMOには適用にならないことから、病初期におけるMSとNMOの鑑別が非常に重要になりますが、今回の学会では両者の鑑別が難しい症例や、診断における問題点を指摘する報告が目立ちました。新しい技術を用いたMRI撮像法の有用性の報告も興味深かったです。今後もいくつか新しい治療法の開発が予定されていますが、適切な治療法を選択するための的確な診断と、正しい病態把握がより重要になってきます。
東京での開催は地方都市開催に比べると旅情に欠けますが、参加者が多く、いろんな人に会えるメリットがあります。
# by multiplesclerosis | 2012-05-26 13:47 | 学会報告 | Trackback | Comments(0)







4月28日に仙台市福祉プラザでMS虹の会の総会と講演会が開催され、海外出張中の藤原先生の代わりに久しぶりに中島が参加し、1時間の講演も行いました。顧問でいらっしゃる広南病院の佐藤滋先生も出張先の長崎から直接駆けつけてくれて、一緒に医療相談に応じました。
今日の講演会は市から委託された難病医療相談会も兼ねており、仙台市の健康福祉局の相談係の方も参加されました。仙台市在住の患者さんにはダイレクトメールで案内が送付され、そのためか今日の講演には50人近い参加者があったようです。
MSキャビン主催で、六本木アカデミーヒルズ49で開催された第8回多発性硬化症フォーラムに参加してきました。
中尾先生のご講演では、視神経炎の診断における中心フリッカー値の測定と、瞳孔異常の重要性が強調され、他の病態との鑑別において必須の検査であることがよくわかりました。また、中心フリッカー値の低下が視力の低下に先行することから、異常を感じたらまず中心フリッカー値を測定することを勧めておられました。眼科の先生方の間でも抗アクアポリン4抗体の重要性はかなり浸透しており、多くのNMO患者さんが眼科で見いだされるようになっています。たとえ視神経炎の既往しかない場合でも、抗アクアポリン4抗体陽性であれば、NMOとして神経内科を併診するべきだと言うお話を聞いて、とても嬉しく思いました。
NMOの痛みの病態と治療では、「慢性疼痛治療ガイドライン」に沿った治療法の選択をお話しました。また、NMOの痛みが生活の質(QOL)を低下させ、歩行や生活を楽しむといいったことに影響していることもお話しました。神経内科では満足な痛みの治療を受けられないこともあり得るので、積極的にペインクリニックに相談することもお勧めしました。痛みの治療法の開発は再発予防の治療法開発と同じくらい重要な課題です。
先週の土曜日(12月3日)に高知でこうち多発性硬化症友の会の皆さんと共催で、高知市のお隣の南国市で医療講演会を開催しました。高知ではおととしに続いて2度目の医療講演会でした。かぜぎみで体調は今一つだったのですが、早朝に自宅を出発しなんとか仙台空港から伊丹を経由して、午前11時ごろに高知龍馬空港に到着しました。こうち多発性硬化症友の会の代表の田村大作さん、渡辺さんが出迎えてくださいました。午後の講演会まで少し時間があったので、まず車で坂本龍馬記念館に連れて行っていただきました(写真1)。土佐藩を脱藩した無役の青年が時を武士の世の中から明治へと動かし日本の近代化の基礎をつくり、さらに今日でも多くの観光客をこの町に呼び込んでいることは、驚き以外の何物でもありません。
NPO法人高知県難病団体連絡協議会事務局長の竹島和賀子さんなどとも一緒に昼食をいただいた後に講演会場である南国病院(写真2)へと向かいました。副院長で神経内科部長の吉村公比古先生は前回も会場をお世話してくださいましたし、アクアポリン4抗体陽性症例のご経験もあり、診断や治療のことなどいろいろお話ししました。
講演会には県内各地と愛媛県から40名ほどの方がご参加いただきました。まずMSとNMOについて、臨床症状やMRI所見、アクアポリン4抗体、両疾患の治療などについて1時間ほどお話ししてから、質問を受けました(写真3)。MSやNMOの症状や診断のこと、新たに承認された経口薬フィンゴリモド(イムセラ/ジレニア)などいろいろご質問をいただきました。
去る2011年11月12日から17日まで北アフリカの国モロッコの世界遺産の町マラケシュにおいて、第20回世界神経学会(World Congress of Neurology)が開催されました。仙台から成田、パリ、カサブランカと飛行機を乗り継ぎ、約30時間かけてマラケシュに到着しました。とにかく疲れました。北アフリカでは、このところアルジェリア、エジプト、リビヤなどの国々で民衆が蜂起(いわゆる“アラブの春”)し、ムバラク大統領やカダフィ大佐など長年にわたり国を支配してきた独裁者たちの政権が倒されましたが、モロッコは国王(ムハンマド6世)を元首とする立憲君主制国家であり、このような動きはまったくなく平穏でした。国内には8つのユネスコ世界遺産があり、マラケシュの旧市街もその一つです。マラケシュはベルベル語で「神の国」の意味で、人口66万人と国内第三の都市で、観光が主体の町です。街中の交差点にはそれぞれ警察官が立ち交通整理をしていました。交通信号はまったくなく、車の流れが途切れるのを見計らって道路を横断します(けっこうヒヤヒヤものです)。モロッコの食べ物としては、小麦粉を粒状にしたものを使った“クスクス”(Couscous)やとんがり帽子のような形をしたタジン鍋を使った鍋料理が有名です。当科から参加した黒田先生と一緒にこれらの料理を味わいましたが、いずれも日本人の口に合う味でした。
世界神経学会は世界中の神経内科医が集まる国際学会であり、現在は2年ごとに大陸を移動しながら開催されており、2年前はタイのバンコク(アジア大陸)でした。今回は第20回という節目の会合でおそらく初めてアフリカで開催されたと思います。“アフリカと共に、アフリカのために”(With Africa, for Africa)をスローガンとして、6日間にわたり神経内科学のあらゆるトピックスを網羅する学会でした。123カ国から3200名の参加者があったそうです。日本からもたくさんの神経内科の先生方が参加されました。多発性硬化症(MS)は、脳卒中、てんかん、神経変性疾患、疼痛とともに5つの主要なトピックスの1つとなっています。
「MS」のティーチングコースでは、MSとNMOの臨床、MRIなどの検査所見、病理学的所見や治療の相違、アクアポリン4抗体の意義などについてまとめて話しました。質問の時間には、参加者の先生方から具体的な症例の治療をどうするか、アクアポリン4抗体の測定などについてたくさんの質問をいただきました。そのほかケンブリッジ大学のコンプストン教授はMSの病態について詳細な知見を紹介され、最近の欧米で行われた大規模な遺伝子解析(GWAS)の結果から、MSはTリンパ球がその病態に重要であることが確認されたと報告されました。またECTRIMS(欧州MS学会)の会長であるフランスのクラネ教授が、今年発表された改訂マクドナルド診断基準(国際的に用いられているMSの診断基準)の要点を解説されました。特に病変の空間的多発、時間的多発に関するMRIの基準がより感度の高いシンプルなものに改訂されたことを強調され、より早期のMS診断が可能になり早期治療に結びつくことが期待されると述べられました。