第8回多発性硬化症フォーラム
MSキャビン主催で、六本木アカデミーヒルズ49で開催された第8回多発性硬化症フォーラムに参加してきました。第2会場の午前中のセッションを担当し、「視神経炎」(近畿大学の中尾雄三先生)、「NMOの痛みの病態と治療」(中島)、「血液浄化療法」(埼玉医科大学総合医療センターの王子聡先生)、「ホームページに寄せられたQ&A」(中島)の4つの講演を企画させていただきました。進行は藤原教授です。
中尾先生のご講演では、視神経炎の診断における中心フリッカー値の測定と、瞳孔異常の重要性が強調され、他の病態との鑑別において必須の検査であることがよくわかりました。また、中心フリッカー値の低下が視力の低下に先行することから、異常を感じたらまず中心フリッカー値を測定することを勧めておられました。眼科の先生方の間でも抗アクアポリン4抗体の重要性はかなり浸透しており、多くのNMO患者さんが眼科で見いだされるようになっています。たとえ視神経炎の既往しかない場合でも、抗アクアポリン4抗体陽性であれば、NMOとして神経内科を併診するべきだと言うお話を聞いて、とても嬉しく思いました。
NMOの痛みの病態と治療では、「慢性疼痛治療ガイドライン」に沿った治療法の選択をお話しました。また、NMOの痛みが生活の質(QOL)を低下させ、歩行や生活を楽しむといいったことに影響していることもお話しました。神経内科では満足な痛みの治療を受けられないこともあり得るので、積極的にペインクリニックに相談することもお勧めしました。痛みの治療法の開発は再発予防の治療法開発と同じくらい重要な課題です。王子先生の血液浄化療法の解説は非常にわかりやすく、単純血漿交換と免疫吸着療法の違いがよく理解できたと思います。また、埼玉医大で勧めている免疫吸着療法の早期導入はとても治療成績がいいので、重症の患者さんの場合の標準的な治療法になりうるかもしれません。
今日はとても天気が良く、六本木ヒルズからは富士山がきれいに見えました。
# by multiplesclerosis | 2011-12-11 23:43 | 講演会報告 | Trackback | Comments(0)







先週の土曜日(12月3日)に高知でこうち多発性硬化症友の会の皆さんと共催で、高知市のお隣の南国市で医療講演会を開催しました。高知ではおととしに続いて2度目の医療講演会でした。かぜぎみで体調は今一つだったのですが、早朝に自宅を出発しなんとか仙台空港から伊丹を経由して、午前11時ごろに高知龍馬空港に到着しました。こうち多発性硬化症友の会の代表の田村大作さん、渡辺さんが出迎えてくださいました。午後の講演会まで少し時間があったので、まず車で坂本龍馬記念館に連れて行っていただきました(写真1)。土佐藩を脱藩した無役の青年が時を武士の世の中から明治へと動かし日本の近代化の基礎をつくり、さらに今日でも多くの観光客をこの町に呼び込んでいることは、驚き以外の何物でもありません。
NPO法人高知県難病団体連絡協議会事務局長の竹島和賀子さんなどとも一緒に昼食をいただいた後に講演会場である南国病院(写真2)へと向かいました。副院長で神経内科部長の吉村公比古先生は前回も会場をお世話してくださいましたし、アクアポリン4抗体陽性症例のご経験もあり、診断や治療のことなどいろいろお話ししました。
講演会には県内各地と愛媛県から40名ほどの方がご参加いただきました。まずMSとNMOについて、臨床症状やMRI所見、アクアポリン4抗体、両疾患の治療などについて1時間ほどお話ししてから、質問を受けました(写真3)。MSやNMOの症状や診断のこと、新たに承認された経口薬フィンゴリモド(イムセラ/ジレニア)などいろいろご質問をいただきました。
去る2011年11月12日から17日まで北アフリカの国モロッコの世界遺産の町マラケシュにおいて、第20回世界神経学会(World Congress of Neurology)が開催されました。仙台から成田、パリ、カサブランカと飛行機を乗り継ぎ、約30時間かけてマラケシュに到着しました。とにかく疲れました。北アフリカでは、このところアルジェリア、エジプト、リビヤなどの国々で民衆が蜂起(いわゆる“アラブの春”)し、ムバラク大統領やカダフィ大佐など長年にわたり国を支配してきた独裁者たちの政権が倒されましたが、モロッコは国王(ムハンマド6世)を元首とする立憲君主制国家であり、このような動きはまったくなく平穏でした。国内には8つのユネスコ世界遺産があり、マラケシュの旧市街もその一つです。マラケシュはベルベル語で「神の国」の意味で、人口66万人と国内第三の都市で、観光が主体の町です。街中の交差点にはそれぞれ警察官が立ち交通整理をしていました。交通信号はまったくなく、車の流れが途切れるのを見計らって道路を横断します(けっこうヒヤヒヤものです)。モロッコの食べ物としては、小麦粉を粒状にしたものを使った“クスクス”(Couscous)やとんがり帽子のような形をしたタジン鍋を使った鍋料理が有名です。当科から参加した黒田先生と一緒にこれらの料理を味わいましたが、いずれも日本人の口に合う味でした。
世界神経学会は世界中の神経内科医が集まる国際学会であり、現在は2年ごとに大陸を移動しながら開催されており、2年前はタイのバンコク(アジア大陸)でした。今回は第20回という節目の会合でおそらく初めてアフリカで開催されたと思います。“アフリカと共に、アフリカのために”(With Africa, for Africa)をスローガンとして、6日間にわたり神経内科学のあらゆるトピックスを網羅する学会でした。123カ国から3200名の参加者があったそうです。日本からもたくさんの神経内科の先生方が参加されました。多発性硬化症(MS)は、脳卒中、てんかん、神経変性疾患、疼痛とともに5つの主要なトピックスの1つとなっています。
「MS」のティーチングコースでは、MSとNMOの臨床、MRIなどの検査所見、病理学的所見や治療の相違、アクアポリン4抗体の意義などについてまとめて話しました。質問の時間には、参加者の先生方から具体的な症例の治療をどうするか、アクアポリン4抗体の測定などについてたくさんの質問をいただきました。そのほかケンブリッジ大学のコンプストン教授はMSの病態について詳細な知見を紹介され、最近の欧米で行われた大規模な遺伝子解析(GWAS)の結果から、MSはTリンパ球がその病態に重要であることが確認されたと報告されました。またECTRIMS(欧州MS学会)の会長であるフランスのクラネ教授が、今年発表された改訂マクドナルド診断基準(国際的に用いられているMSの診断基準)の要点を解説されました。特に病変の空間的多発、時間的多発に関するMRIの基準がより感度の高いシンプルなものに改訂されたことを強調され、より早期のMS診断が可能になり早期治療に結びつくことが期待されると述べられました。
11月7日から10日にかけて、ロサンゼルス空港近くのホテルでガシー・ジャクソン慈善財団のミーティングおよびNMO患者集会が開催されました。今年で4回目となりますが、前回よりも参加者が増えて、今年は世界中から50名以上の専門家が集まり、NMOの研究および治療について連日議論が繰り広げられました。
1時間近く議論した後はテーマ毎に各テーブルでの議論内容が発表されます。最も盛り上がったのは、バイオマーカーの必要性についてで、抗アクアポリン4以外の疾患マーカー、活動性マーカーが今後の臨床研究には絶対的に必要だという共通認識が生まれました。当講座で報告した髄液のGFAP濃度は多くのテーブルで話題になったようですが、障害度や予後判定のマーカーとしては適当であるものの、再発を予想したり、活動性を評価できるものではありません。千原先生が報告した血液中のプラズマブラストの割合も活動性のマーカーの候補として話題になりましたが、経時的な変化の確認が必要です。これら以外のマーカーを探すためには、患者さんの協力が必要で、再発、寛解という時期に拘わらず、頻回に血液や髄液をサンプリングすることで、再発の予兆や疾患活動性と相関する変化を見落とさないようにしなければなりません。
ECTRIMSが、5th Joint Triennial Congress of ECTRIMS & ACTRIMSという形で10月19日から22日までオランダのアムステルダムで開催されました。参加人数は約7000人、演題数は1133題もあり、MSの診療・研究・創薬に携わる世界中の人たちが集まったと言えそうです。
NMO関連ではUCSFとコロラド大などとの共同研究で作成された、AQP4に対するモノクローナル抗体、Aquaporumabに注目が集まっていました。完全ヒト化IgG1抗体ですが、遺伝子操作で病理活性を全くなくしたそうで、動物モデルにおいてその効果が示されていました。月に一度の点滴注射でNMOの再発予防に用いる方向で開発を進めるとのことです。同じグループから、抗AQP4抗体とAQP4の結合をブロックする3種類の化合物の実験報告もあり、こちらは経口薬としての開発が期待できます。
新宿の京王プラザホテルで日本神経免疫学会の学術集会が開催されました。今年は会長である信州大学の高先生の取り計らいで、日本臨床免疫学会総会との合同開催となり、「免疫疾患学会連合2011」として開催されました。学会2日目は朝から晩まで合同シンポジウムが企画され、普段あまり聴くことがない、関節リウマチや炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎などの病態やこれら疾患の最新の治療の話題がたっぷり聴けて、とても勉強になりました。特に、関節リウマチにおける治療の進歩には驚かされました。MSの治療開発のスピードも速くなったとは思いますが、5年くらいは遅れている印象です。